魔王と魔王(1)
「ディバイド・エア!!」
渾身の一刀が地を裂き、大勢の魔族達を斬り裂く。
進退を繰り返す魔族達の迎撃の為に国々を回り、もう随分と長く戦い続けていた。
そうしてる内に、魔族達の中で響めきが見られる様になった。
「な…何でだ…? 何で疲れて無いんだアイツ…?」
もうかなり長時間戦闘をこなしているにも拘わらず、俺の勢いが殆ど衰えて無い事に疑問に思う魔族達からそういう言葉が零れていた。
実際、俺も今は殆ど疲れを感じていなかった。何故かと言うと、
(ありがとう、イリス…お陰でまだまだ戦える!!)
そう、イリスのお陰だ。イリスに宿っている調和の力が、俺の身体を常に最善のコンディションに仕上げてくれているのだ。
それは外傷の治癒だけでなく、疲労の回復等も含まれており、俺はこの剣がある限り疲労せず戦い続けられる。
そうして戦い続ける内に、寧ろ魔族達の方に疲弊が見え始めていた。
「て、撤退だー!!」
号令で魔族達が撤退していく。俺は逃げようとしていた魔族の中の一人を捕まえ、地面に引き摺り倒した。
「ひ、ひぃぃぃ!!」
「もうこんな事止めさせろ!! 何度やっても同じだ!!」
「く、くそおぉぉ!!」
魔族が身体を起こし、手に持っていた剣を俺に突き刺そうと向かってくる。
俺はそれを躱し、すれ違いざまに斬り捨てた。
「…くそっ!!」
俺は帰還魔術で、次の戦場に跳んだ。
そしてまた、魔族を迎え撃つ。何度も、何度も。
「ぐあっ!!」
偽者の一撃を受け、我は吹っ飛ばされた。
魔剣の力によって、我の今使える力は殆ど封殺されてしまい、正直かなり不味い状況であった。
「どうした? 本物の魔王はこの程度なのか?」
「ふん…人様の物を使って偉そうに…」
「今は俺の物だ」
どういう原理かは知らないが、奴は魔剣の力を完全に使いこなしていた。
あの魔剣がある以上、我の力は通じずあの魔剣を封じるか奪い返すかしなければ、我に勝機は無い。しかも恐らく『アレ』も使える可能性が高い。
もし『アレ』を使用されれば、この里は終わりだ。なので、絶対に使わせてはいけない。
「魔族共が足止めして勇者クウゴはこの場に来ない…もうお前は終わりだ」
「ふ…『魔族共』か、魔族を率いる魔王とはとても思えない呼び方だなぁ!!」
我は右腕を振りかぶり、魔王の爪撃を放った。空を奔る斬撃波が、偽者の眼前に迫った。
「…下らん」
偽者は軽々と魔剣でそれを弾き飛ばした。だか我はすかさず偽者の懐に飛び込み、手を翳した。
「魔王権能、刻っ…!!」
そのまま至近距離で我が権能を発動しようとしたが、その前に奴の繰り出した拳により、我は氷壁まで吹っ飛ばされ背中を打ち付けられた。
「がはっ…!!」
五割まで戻った我の力を相手にして、ここまで余裕を見せるとは、その偽者の戦闘力に我は内心驚嘆していた。
しかし、最も驚くべきは、その『存在の異質』さだった。
他の魔族と比べて、目の前の奴からは複数の魔族の気配を感じていた。
まるで複数の魔族達が、そこに集まっているかの様な、そんな異質な存在感を放っていた。
「大方お前は、魔族の平和の為とか、同胞の無念を晴らす為とか、そんな物の為に戦っているんだろう?」
「ほう…貴様は違うというのか?」
「ふん…人間共に敗けたのも納得な思考だな。実に馬鹿馬鹿しい」
そう言って偽者は、魔剣を我の眼前に突き出してきた。
「俺の求めるのは『闘争』だ。互いに憎み、争い、それがこの世界を壊す、それ程の闘争…地に満ちた人間共も、魔族共も、その為の『贄』に過ぎない…」
「!!」
「そして…」
偽者は手に持っていた魔剣を天に向け振り翳し、
「お前もその、贄の一人だ」
それを、我に目掛け振り下ろした。




