守戦(5)
「…アンタが、ハマドウか?」
「へぇ…、クウゴから話は聞いてたんだね」
そう言って仮面の男は、その仮面を外してみせた。
「!!」
その素顔は、クウゴとほぼ変わらない年齢の少年であった。
かつて彼の関連書物を読み漁った事があった俺は、そこに記載されていた人物画で、ハマドウの人相は知っていた。
その顔は、間違いなく『若い頃のハマドウ』であった。
「この人が、クウゴさんの…」
「初めましてだな大魔術士殿。どんな形であれ、お会い出来て光栄だよ」
「それはどうも。君達は最近クウゴと行動してる魔術士と竜操手の娘だね? 悪いけど、グランディンの代わりに僕の相手をして貰うよ」
「そいつは嬉しいねぇ…アンタは俺の、憧れだからなぁ!!」
俺はそう言って、ハマドウに向けて魔弾を五発撃ち込んだ。それと同時に追加のカードを取り出して次の術に備える。
ハマドウが何かしらの防御か回避を取ろうとしたら、俺がそれに追撃をかけ、その隙にソニアにディンの援護に行って貰う。そう思い俺はカードの魔力を解き放った。
しかし、ハマドウは回避せず、その場で動かなかった。魔弾はハマドウに着弾し、
(なっ…!!?)
なかった。魔弾はハマドウの身体をすり抜けていき、後ろの氷壁を穿った。
しかも、
「GYAOOOOOO!!!」
「リイン!!?」
突如、リインの左の翼が凍り付き、砕け散った。
そして、飛行能力が失われたリインはそのまま落ちていき、
「きゃあああっ!!!?」
地面に叩きつけられ、乗っていたソニアもリインの背から投げ出されて、そのまま気絶した。
「ソニア!!」
俺はソニアの方を振り向いた。そこに、
「ほらほら、余所見してて良いのかな?」
「!!」
ハマドウのいる方から突如光が迸った。俺はその魔力の『起こり』から判断した。ハマドウは雷の魔術を使ってくる。
俺は咄嗟に攻撃用に解放したカードの魔力を防御に転用、水の魔術で塩水の障壁を創った。
そして、俺の読み通り、ハマドウは雷の魔術を放ってきた。
障壁にぶつかった雷は、塩水に流れて散っていき、その威力は大きく削られた。
「やるじゃないか。僕の魔力の起こりから次の術を読んで、それを防ぐ術の発動、大した判断力だ」
ハマドウはそう言って、称賛する様に手を叩いた。
「はぁっ…はぁっ…!!」
完全に遊ばれていた。
リインの翼を凍らせた氷の魔術は完全に見えなかったし、あの雷の魔術にしてもハマドウが声を掛けなかったら俺は起こりを見る事が出来ず、確実に直撃していただろう。
わかってはいた、しかしここまでとは。
大魔術士ハマドウ、隔絶した魔術士としてのレベルの差が、そこにあった。
「しかし、もうあんまり後が無いみたいだね…準備不足みたいだし」
「くっ…!!」
ルクスブルグ潜入の際に大量消費したカードの補充は、まだ全然出来ていない。碌に時間が取れなかったからだ。
その残り枚数は戦闘をこなすには、ましてやあのハマドウを相手取るのにはあまりにも心許ない数であり、ハマドウの言う通り俺にはもう後が無かった。
「もし、クウゴを当てにしているのなら無駄だよ。彼は来ない」
「…どういう事だ?」
「グランディンは魔族の兵士達にこう命令している。『少しでも戦況が悪くなったら一時撤退、そして暫くして進軍しろ』…とね」
「!!」
「クウゴが各地の魔方陣で跳び回って撃退する算段だったんだろうけど、それはわかってたよ。だから魔族達には水際ギリギリで侵攻させてるんだ…少しでも放置すれば、街が攻め込まれる位に、ね」
やられた。俺達は完全にハマドウの掌の上だった。ハマドウはクウゴを引き離して、この里を潰すつもりだったのだ。
「クウゴは他の国を放ってはおけないし、君達を信じてここを任せてるからここには来ない。残念だったね…君達も、クウゴも」
「くそっ…!!」
「この里は、潰させてもらう…」




