守戦(3)
「撤退だー!! 退くぞー!!」
魔族の将が号令を放ち、魔族達は撤退していった。
(…やっぱり、何かおかしい)
アイオーン、グラナ、そして今はエルーシャにて魔族の軍勢を退ける事に成功した訳だが、俺は魔族達の引き際に、どこか違和感を感じていた。
「いやぁ助かりましたクウゴ殿」
ギデオン騎士団長が駆け寄り、労いの言葉を掛けてきた。そして、俺の手に持つイリスに目を向けた。
「おお!! それがヴォルカで手に入れたという新しい剣ですな!! いやぁ見事な造形ですなぁ!! しかし、この造りは私も見た事無い…ま、まさかこれは古代の民に受け継がれてきたあの技法で造られた剣!! いやぁまさかこの目で見る事が出来るとは…」
ギデオンがイリスを見ながら何か語り出している間、俺はその違和感について考えていた。
戦況が傾いてきたにしても、あまりにもあっさり引き過ぎだ。
まるで、俺が出てきたのを見計らって退いてきたみたいに見えた。
「!! まさか!!?」
俺はイリスを鞘に収めると、ギデオンに向いて、
「ギデオンさん!! 俺は今からアイオーンに戻ります!! 軍はこのまま退けないで下さい!!」
「え、クウゴ殿? それはどういう…」
俺はその問いに返答せず、アイオーンに戻った。
アイオーンの魔方陣に降り立つと、すぐさま部屋を出た。
「クウゴ!!」
リタ王女が俺に気付き、すぐに傍に駆けつけて来た。
「リタ王女!! 状況は?」
「…さっき退却を確認した魔族の兵達が、再び此方に進軍を始めました。これは一体…?」
「やっぱり!!」
俺はリタ王女の話を聞くと、すぐさま城を飛び出した。
「く、クウゴ!!」
呼び止めるリタ王女の声を余所に、城下町を駆け抜けて、街の外に飛び出す。
すると、アイオーンの街に向けて再進軍を始めていた魔族の軍勢が見えてきていた。
(やっぱりそうだ!! コイツら、俺が他の国に跳んだ瞬間、進軍し始めたんだ!!)
やけに引き際が早かったのも、納得がいった。
こうして俺が居なくなったタイミングで、この様に再進軍を掛けるつもりだったのだ。
「くそっ…!!」
俺はイリスを抜き、魔族の軍勢に向かって走り出した。
こうして魔族に斬り掛かっていき、魔族達を斬り伏せていく。すると、
「撤退だー!!」
魔族達の将が声を上げた。魔族達はその号令に従い退いていく。
「ちっ…!!」
俺は今度はグラナに跳ぶ。そして、グラナも同様であり、これから再進軍が始まろうとしていた。
俺はすぐさま戦場に向かい魔族達と交戦、すると、
「撤退だー!!」
魔族達は退いていく。今度はエルーシャへ。
やはりエルーシャも同じであり、当然すぐに戦場に向かう。そして、
「撤退だー!!」
それの繰り返しだった。俺が戦場に向かい、魔族達が撤退、そして俺が去れば再進軍し、俺が戦場に向かう。
俺が放置すれば、瞬く間に国を攻め滅ぼされる絶妙な間隔で、魔族達は進退を繰り返してきた。
こうして水際でジリジリと、付かず離れずな魔族側の攻めにより、少しずつ人間側の戦力を削がれていった。
(これ…いつ終わるんだ…?)
いつ終わるやもわからない戦いに、次第に俺は焦りと苛立ちを感じていた。




