守戦(2)
「…来たか」
結界の縁の前に立つ我の眼前に、魔族達が迫ってきていた。
「止まれ!!」
誰かの号令により魔族達がその行進を止める。そして、その中の一人が前に出て、仁王立ちになって腰から抜いた剣を地に突き立てた。
「我は魔王軍剛剣隊副隊長、ハウレンである!! この里で匿っている人間共を引き渡せ!! 然もなくば、この里は我々が潰す!!」
ハウレンと名乗る者が声高々と吼える。
「剛剣隊…貴様等、イエグロスの率いていた部隊だな?」
聞き覚えのあった部隊名だった為我が問うと、ハウレンは青筋を立て、その顔に怒気が宿った。
「小娘、貴様…イエグロス様を呼び捨てするとは良い度胸だな…!!」
「ふ…イエグロスの部下にも拘わらずこの里を潰そうとするとは、貴様等はイエグロスの事を何もわかってない様だな」
「何だと…!!?」
「まぁ、我もついさっき知ったのだから貴様等と変わらぬのだがな」
「訳のわからぬ事をべらべらと…!! 殺す!!」
「遅い」
我はそのハウレンの懐に一瞬で飛び込むと、ハウレンが構えようとした剣を掠め取り、
「フン」
そのまま横一文字で剣を振り抜き、ハウレンを斬りつけた。
「は、ハウレン副隊長!!」
「どうした? イエグロスは剣の使い方も教えてくれなかったか?」
「く…か、掛かれ!!」
斬りつけられた腹部を押さえながらハウレンは檄を飛ばし、魔族達は一斉に我に向かってきた。
(一緒に戦ってくれ、イエグロス!!)
我は剣を構え、魔族達に迎え撃った。
「馬鹿な…何故…!?」
目の前の光景に、魔族の兵達が困惑していた。
ソニア経由でディンから反対側を守る様に言われた俺は、フラクタ達と一緒にディンが居る場所とは反対側の方に来ていた。
そして、そこには、
「何故…イエグロス様がここに…!!?」
魔族達に対峙する様に、四魔将の一人であるイエグロスがそこに居たのだ。
俺はクウゴからの話でしか知らないから何とも言えなかったのだが、周りの反応からアレがイエグロスだというのは理解出来た。
「これは…グランディン様の幻召魔身…!!」
「ネクスさん…?」
「グランディン様の技の一つで、四魔将の幻影を作り出す技だ。それでイエグロスの幻影を作り出したのだ…」
「じゃああれは…ディンさんが作ったおじ様の幻影…」
イエグロスの幻影が動き出す。そして、
「うわぁぁぁぁぁ!!!!!」
その剛剣により、魔族達の部隊は次々に斬り伏せられていった。
その一挙手一投足、全てが『絶技』と言える程に凄まじい剣技であり、鋼の嵐が吹き荒れるが如きその光景に俺は息を飲んだ。
「すげぇ…」
「幻召魔身で作られた幻影の強さは、オリジナルに比べると僅かには劣るが、それでも強さはこの通りじゃ」
そして、それを見たフラクタは、
「おじ様が…里を守って…」
そう言葉を零し、その目には涙が流れていた。
「ま、惑わされるなぁ!! おのれイエグロス様の偽物めえ!!」
そう言って多くの魔族達がイエグロスに斬り込んで来るも、それらは瞬く間にその剛剣の餌食となった。
こうして、里の守護神と化したイエグロスの前に、魔族の部隊は鎮圧されたのだった。




