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守戦(1)

「ディンさーん!!」


里の結界を出てすぐ傍、結界の縁に立っていた我に向かって、リインに乗ったソニアが上空から高度を下げながら声を掛けてきた。


「ソニア、どうだった?」


「はい、ディンさんの言う通り、この場所に何か大勢近付いてました。ただ…」


ソニアはそう言って、二つの方向を指を差した。


「こっちに向かって来てるのは、この二方向からでした。全く反対からそれぞれ二つの集団が来てます」


「そうか…ご苦労だった」


二方向からの同時攻撃、つまりは挟み撃ちという訳だ。しかし、今の我には大して問題では無かった。


「問題ない、今の我なら『アレ』が使える」


漸く力が五割まで戻り、あの力が復活した。これなら二方向からの挟撃程度ならどうとでもなる。


そうして魔力を練り、それを発動した。


「力を借りるぞイエグロス…、秘技・幻召魔身(げんしょうましん)!!」





アイオーンの魔方陣に降り立った俺は、状況把握の為即座にその部屋を飛び出した。


アイオーンの魔方陣設置場所は城の中の一室であり、俺は城内に居るであろうリタ王女を探した。


「クウゴ!!」


声の方に視線を向けると、リタ王女が此方に向かって走ってきていた。


「リタ王女!! 状況は?」


「クウゴ…来てくれると思ってました。今、魔族の軍勢が此方に来てて、アイオーンの兵達が迎撃中…ですが、今のアイオーンの兵力では…」


「わかりました。俺がすぐに行きます」


そう言って、俺は城を飛び出した。


戦場に向かい街中を駆けている途中、アイオーンの城下町の様子が目に入った。


ルクスブルグの侵略の爪痕が色濃く残っているその様を見て、今ここで魔族を撃退出来なければ間違いなくアイオーンは終わりだと俺は確信した。


(絶対止めないと…!!)


そう思い俺は、走るスピードを更に速めた。


街を出ると、すぐそこは既に戦場であった。


既にアイオーンの兵達が、魔族の兵達と交戦中であり、人魔入り乱れた乱戦が繰り広げられていた。


しかし、見た所人間側が数でも強さでも押されている様に見える。やはりルクスブルグの侵攻の際のダメージは深刻な様で、アイオーン軍にかつての強さは無い様に思えた。


俺はすかさずその渦中に飛び込み、イリスを抜いた。


「ヴォルテック・エア!!」


俺が放った斬撃の大渦が、多くの魔族の兵を飲み込み、その身を斬り刻みながら巻き上げられていく。


「お主は…!?」


アイオーンの兵達が俺の姿を見て、警戒する様に身構える。


俺は構えを解かぬまま、視線だけを兵に向け、


「リタ王女から話は聞いています。加勢します」


とだけ言って、魔族の軍勢に向け走り出した。


「済まない、感謝する!!」


背中越しにその言葉が聞こえ、アイオーンの兵達も俺に続いて魔族達に向かっていった。





「はぁっ!!」


一人、また一人と魔族達を斬り伏せていく。


魔族達は次第に数を減らしていき、その戦況の均衡は徐々に傾いていった。そして、


「撤退だー!! 退けー!!」


魔族の将らしき兵が号令を出し、魔族の軍勢は撤退していった。


(何だ…? やけにあっさり退いたな…?)


些かその引き際に違和感を感じたが、兎に角これでアイオーンは守り切った。


「助太刀感謝する。お主は一体…?」


先程の兵が駆け寄り話し掛けてきた。しかし、今は話している余裕は無い。


「俺はクウゴ、リタ王女に聞けばわかると思います。じゃあ、今は時間が無いのでこれで」


俺はそう言うと、帰還魔術を起動した。


「消えた…!?」


次の行き先は、グラナだ。

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