暗黒の時代(3)
「俺の知ってる話は、ここまでだ」
「…そんなに酷いのか?今の世の中…?」
「らしいぜ。俺は当時を知らねぇから何とも言えねえけど」
「……」
あの時仕損じた俺のせいで、多くの人々が犠牲になってしまった。俺はあの時、何もやり遂げれてなかった。
そんな現実を突き付けられ、俺は自分自身の不甲斐なさを呪った。
「済まない…俺のせいで…」
「俺のせい、ねぇ…果たしてそれは、どうなんだろうか…」
オーキが小さく溜息をつく。
「確かに、今のこの暗黒の時代はグランディン復活が切っ掛けな訳だが…だからお前のせいだとか、そんな話じゃないと思うんだよなぁ」
「…どういう意味だ?」
「うまく言えねえけど…、人と魔族って、昔から争ってたんだろ?お前が最初に召喚された時よりずっと前から。1番の原因は、そこだろ?」
「あ…」
「人間と魔族が仲悪い限り、傷付き、傷付けられ、そういうのが繰り返されてるってだけだ。今も、昔も。だから、例えグランディンが復活しようがしまいが、遅かれ早かれ、同じようなことになってたさ」
オーキが何を言いたいのか、何となくわかった。
人間と魔族、2つの種族が昔から今まで相容れなかったこと、これがそもそもの原因であると言いたいのだろう、多分。
確かに、もし人間と魔族が、最初から互いに手を取り合える関係であったのなら、今にかけて起きた互いの痛みや悲劇は全て、起こらなかったかもしれない。
同じ世界に住む両種の亀裂。その切っ掛けとは何だったのだろうか?俺にはそんな過去の事はわからないが、こう思わずにはいられない。
もし、そこに誰かの悪意が介入しているのであれば、俺はそれを、絶対に許さないだろう、と。
「ありがとうオーキ、お陰で色々わかったよ」
「良いって事よ。それよりもお前、これからどーすんの?なんか、当てはあんのか?」
「取り敢えず、どっかで装備を整えたいとは思ってる。ずっとこの格好って訳にもいかないからな…」
俺の着ていた学生服は、東の森で闘った魔族の炎に灼かれボロボロだった。そうでなくとも、これから魔族との闘いに身を投じていく予定なのだ、これでは心許ない。
今後の為にも、どこかでしっかりと準備しておかなければならないのだ。
「それなら、俺と一緒に来ないか?装備の事なら俺が何とかしてやる。ただし…」
オーキが俺の勇者紋を指差し、どこか邪悪な笑みを浮かべる。
「俺の目的に協力して貰う。俺の目的、さっき聞いたろ?」
「ああ、勇者紋の研究だろ?まぁ、俺に出来る限りでなら…」
オーキの目的は、ハマドウの魔術を解析して、自分用の勇者紋を作成する事だという。だからそのヒントを得る為に、ハマドウの工房のあるセレニア城跡に赴いたのだそうだ。
「いやぁ勇者当人のサンプ…協力者が見つかるとはツイてるぜ!ヒッヒッヒ!」
今サンプルって言いかけてたが、聞かなかったことにした。
「んじゃ、もうちょっと工房の中を見ていきたいな。クウゴ、早速協力してくれ。めぼしいモン全部持ってくぞ」
「はぁ…わかったよ」
親友の遺品を物色するのはあまり気は進まないが、やるしかない。
俺はオーキに続き、工房への階段を降りようとした。
「!!」
が、異変を察知した俺は脚を止めた。
オーキも俺と同様に何かを感知したのか、俺の方へ振り返った。
「…何か、来たな」
「ああ、多分これは…」
オーキが何かを言いかける。が、それを遮る様に突如、城内に爆音が響き渡った。
壁や床のヒビは瞬く間に大きくなっていき、場内は大きく揺れ始める。
「!! やばい!!崩れるぞ!!」
轟音と共に、セレニア廃城は崩落した。




