暗黒の時代(2)
俺は少年に質問を投げかけるのに加えて、自身の事情についても説明した。ルクスブルグにて、勇者召喚の儀によって召喚されたという事。そして、自身が100年前の勇者クウゴ本人であるという事を。
「お前が、勇者クウゴ…?」
「信じて貰えるかはわからないけど、そういう事だ」
「…いや、信じるよ。そのルクスブルグが、今の情勢の悪化に託けて、勇者召喚の儀をしようとしてるって噂は耳にしてたからな。それに…」
少年は俺の焼け焦げた衣服の隙間から見える、胸元の勇者紋を指を差した。
「その勇者紋、資料に載ってた伝承の通りだ…いやぁまさか実物を拝めるとは思ってなかった!確かにすげぇ魔力だ!」
何故か少年のテンションが上がっていた。男の胸元見て興奮してる男の様、正直気持ち悪い。
「おっと失礼。俺はオーキ、オーキ・セレスワイズ。ここで何かあったかだったよな?俺の知ってる限りでなら、教えるよ」
100年前、人間と魔族が争いあってた時代、このセレニア王国にて勇者が召喚された。
セレニア国王の命により、後の大魔術士として名を馳せるハマドウにより召喚された勇者クウゴ。
勇者クウゴは、ハマドウを初めとした仲間達と共に旅に出て、各地の魔族に脅かされていた国々を渡り、多くの魔族を討滅していった。
やがて人間と魔族の闘いは佳境を迎え、お互いの種の存亡を賭けた、最終戦争に突入する。
それが後に、討魔戦争と語り継がれる闘いであり、勇者クウゴは魔王グランディンを一騎討ちの末、討滅したのだった。その身を、犠牲として…
「と、ここまではお前も知っての通りだな。それからあった事はまず、各国が総力上げて魔族掃討に当たったのと、勇者召喚の儀が国際条約で禁止になったって事だな」
「何で禁止になったんだ?」
「当時のセレニア国王が、異世界から無理矢理連れて来られた勇者…要するにお前が犠牲になった事に心を痛めたってのが公式の発表だな。相討ち、だったんだよな?」
「…ああ」
「さて、その後の話だな。それ以降は一応魔族は現れなくなって、平和は訪れたんだ…100年間はな」
討魔戦争から100年が経ち、それは突如現れた。
かつて勇者召喚が行われ、伝説の始まりとなった地、セレニア。
今から3ヶ月前、滅びた。
復活した魔王グランディンが率いる魔族の軍勢より、セレニアの人間は為す術無く、一晩で滅亡させられた。
それを皮切りに、世界各国で魔族侵攻が始まり、世界は再び、人と魔が争う時代に突入したのだった。
当時以上の情勢の悪化を見せる今、正に世は暗黒の時代であった。




