暗黒の時代(1)
(やれやれ、やっと着いたか)
道中トラブルはあったが、長旅の末に漸く目的地に辿り着いた。
廃墟と化し、開いたままとなっていた城下町の門をくぐり、先に見える廃城に向けて荒れ果てた街道を歩いて行く。
この俺オーキ・セレスワイズが、この旧セレニア王国に赴いたのには理由がある。
それは、伝説の大魔術士ハマドウの工房だ。
彼はかつて、この国で勇者クウゴを召喚し、その莫大な力の源たる勇者紋を授けたという。俺は前々からその勇者紋に、興味があった。
(欲しい…何としても、絶対!)
世界情勢の悪化に伴い、通っていた魔術学校は休校となり、他にやる事も無かった為、良い機会だと思った。休校の通達が届いた瞬間、俺は荷物を纏め街を飛び出していた。
ハマドウの工房に、何かしらのヒントがあるに違いない。俺はそう思い、ここに来たのであった。
(さて、ハマドウの工房はどこかな?)
崩れかけた城門を潜り、俺は荒れ果てた城内に踏み入れる。
あちこち壊された壁に、壁や床に染み込む血痕。
かつての煌びやかな内装は、今や見る影も無く、亡国という言葉が相応しい、酷い有様であった。
取り敢えず、片っ端から気になる場所を探っていこう。そう思った時だった。
「!!」
どこかから、魔力を感じた。この感覚は、魔術だ。誰かがこの城内で魔術を使用した感覚だ。
(あっちに、誰か居るのか?)
俺は魔力を感じた方向に向かう。そして、その場所に辿り着き、崩れた柱の陰から、その気配の主の様子を窺う。
そこには、俺と近い歳の少年が立っていた。火事場からでも逃げてきたのだろうか、着ている衣服はあちこち煤けてボロボロだ。
「!! 誰だ!!」
俺が身を潜めている方へ向けて、少年は声を上げた。
「!! 誰だ!!」
何者かの視線を感じ声を上げる。俺は即座に地の魔術で石の剣を創り出し、身構える。
魔力を剣に込め、一撃を叩き込もうと、剣を振りかぶる。そして、
「わぁー!!?待て待て待てぇ!!?」
その何者かは、柱の陰から飛び出してきた。
「あ?人間?」
俺は振りかぶった剣を下ろす。それを見た飛び出してきた少年は、安堵した様に大きく息をついた。
「…すまない。てっきり魔族かと思ってな」
「いや、しょうがないさ。何せこんな情勢だしな、どこで魔族と出くわしてもおかしくない。俺もここに人がいるとは思わなかった」
少年はそう言うと、小さく苦笑した。しかし、ここで現地人と出会えるとは丁度良い。
「なぁ、ちょっと聞いていいか?」
「?」
「教えて欲しいんだ。ここで、何があったんだ?」
俺は、少年に尋ねた。




