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2度目の召喚(5)

数日後、ルクスブルグ城にて。


「勇者はまだ帰って来ないのか!」

私が怒号を飛ばす。そこに大臣が駆け寄り、報告する。


「陛下!! 先程、東の森に捜索にあたった部隊より報告です。東の森内にて、血の付いた隷属の首輪が見つかったとの事です。首輪は術者が解除するか被術対象が死ぬかしないと外せない仕組みになっており、恐らくは、魔物に襲われて死んだのかと…」


「なんだと!?くそっ、とんだ期待外れだったわ…!」


勇者の力がどれ程のものかを測るつもりであったというのに、魔物程度に殺されるというあまりにも残念な結果に、酷く落胆した。


(各国でも魔族の侵攻の話が尽きないというのに、このままでは我が国も…!)


私は頭を抱え、一考する。そして、


「大臣、今すぐ城の魔術士達を集めるのだ」


「は、はい。陛下、一体何を…?」


「もう一度、勇者召喚の儀を行うのだ。なぁに、私に良い考えがある」





森を抜けた俺は、今からある魔術を行う為、周囲を確認していた。


これはかなり集中力のいる魔術であり、魔物などが彷徨いている場所では行えない。


(よし…辺りには魔物の気配は無いな。それじゃ、始めるか)


俺はその場で座禅を組み、目を瞑り集中する。


今から行うのは、かつてハマドウに教えて貰った緊急帰還魔術。旅先でもしもの事があれば使うようにと教わっていた。


通常この手の転移魔術は、現在地と行き先にそれぞれ専用の魔方陣を用意しておかなければならない。ルクスブルグにて、俺を東の森へ送り込んだのがその例だ。


この緊急帰還魔術は、行き先となる場所にのみ魔方陣を用意し、その魔方陣に設定された魔力を持つ者を転送する。


その魔力は、俺に刻まれた勇者紋(ブレイヴサイン)の魔力。つまり、勇者専用の転移魔術である。


勇者紋(ブレイヴサイン)を通して、行き先の魔方陣がまだ機能している事は確認済みである。後は、跳ぶだけだ。


(よし、行ける!)


帰還魔術を起動し、俺はかつての旅の拠点、セレニア王国に向けて跳んだ。





魔方陣は、城の地下にあるハマドウの魔術工房に設置されている。


100年後のセレニア王国、俺を知る者は恐らく誰も居ないだろう。最悪城への不法侵入者として捕まる可能性がある。


それでも、あのクソ王がいるルクスブルグよりはマシだと思った。あの慈悲深いセレニア王の子孫が治めてるであろう国であれば、事情くらいは聞いてくれるかも知れないと、そう思っていた。


転移が終わると、俺の視界は真っ暗な闇に包まれた。


(何だ?誰も居ないのか?)


部屋の中を確認する為、指先を炎の魔術で灯す。


「…は?」


俺は辺りを見回して、困惑した。


ハマドウの工房は、長い間人の居た形跡を感じない程荒れはてており、良く見ると、壁や床に乾いた血の痕があちこちに見られた。


最悪のイメージが、頭を過る。


俺は工房から出ようと、出口への階段を駆け上がる。ドアは朽ちかけており、開けようとノブに手をかけると、蝶番が外れて倒れてしまった。


「何だよ…これ…?」


ドアの先には、かつての姿からは到底かけ離れた程に荒れ果てた、城内の光景が拡がっていた。


セレニア王国は、既に滅ぼされていたのだ。

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