強化勇者(5)
セレスワイズ邸大広間にて、俺達は今後の行動の指針を決める為話し合いを行っていた。そして、
「燃やしたってどういう事だゴルァ!!!?」
俺達が城での事を話す過程で、魔方陣シートをディンが燃やした事を話したら、それにブチ切れたオーキが、ディンに凄い剣幕で詰め寄っていた。
「煩い小童だ。また作れば良いだろうが」
それに対し、ディンは全く悪びれた様子も無く言うと、オーキは更に激昂した。
「貴重な素材使ってるって言ってただろうが!! それをお前は、このアホンディンが…!!」
「お、オーキ、気持ちは分かるが今はその話は後にしよう」
俺はそんなオーキを宥める様に言うと、オーキは幾分冷静さを取り戻し、話し始めた。
「くそ…じゃあ話の続きだ。やっぱハマドウは強化勇者を完成させてたんだな」
「ああ。アイオーンで戦った勇者達とは比べ物にならない程強かった」
「そうか…じゃあ今回の件もあって、ルクスブルグは益々その力に傾倒していくだろうな。勇者召喚の儀の資料は相変わらず手元にあるみたいだし」
「すまん、俺が奪えていれば…」
「また、ハマドウが邪魔したんだろ? 過ぎた事をいつまでも悔やんだってしょうが無えよ」
「そうだな。いつまでも過ぎた事をウジウジと考える等、実にみっともな…」
「俺はいつまでも許さねえからなクソ魔王」
ディンが言い切る前に、ディンを睨みながらオーキがこう言い放った。
「さて…誰が流したのかは知らないが、ルクスブルグに関する悪評が流れたお陰で、俺達にとっては悪くない状況になったな」
オーキの言う通り、現状俺達にとっては悪くない状況になっていた。
ルクスブルグのアイオーン侵攻の正当性が無くなった為、他国がアイオーンへの支援がやりやすくなった事だろう。
そして、その悪評の火消し対応に追われている所為なのか、俺達はあんな事をしでかしたにも拘わらず、指名手配等は出されていない様だった。
「よっぽど余裕が無いんだろうな。今回の件で、ルクスブルグは恐らく魔族側からも怒りの買っちまったからな。それらに備える為に戦力とかを他に回せないんじゃないか、ってのが親父の見解だ」
「兎に角これで、俺達は相変わらずフリーで動ける訳か。しかし一体誰が流したんだ…?」
「そんな事はどうでもいい、あの国が死に体なら今の内に攻め落とすまでだ…!! このまま…」
「そんなボロボロなのにか? 今回お前も手酷くやられてんだろ? 無理すんな」
「俺も首輪の抑制は解除しないからな」
「うっ…!!」
オーキと俺がキッパリと言うと、ディンは言葉を詰まらせた。今回強化勇者との戦いで大分消耗しており、暫くは無理は出来ない状態なのは、ディン自身がよくわかっていた。
俺の回復魔術で外傷は治せても、体力までは回復出来ない。というか、ディンの性格上俺に回復を頼むなんて事もしないだろう。実際さっき俺から回復しようとしても「いらん!!」と断られた。
「そこで、俺から提案。フラクタさんについてなんだけど…」
俺が言うと、他の皆がフラクタの方へ視線へ向けた。
「彼女を故郷に送ってあげたいと思う」
「いや、不味くねーか? 魔族側の敵対ムード強くなってる最中に魔族の集落に乗り込むってのは…」
「それがさ…」
俺が先程フラクタと話した内容を皆に伝えた。そして、
「…何だと?」
それを聞いて、露骨にディンの表情に怒りを表れた。
「…私の故郷は『イストンの里』と言って、その…人間と魔族が共存する隠れ里なんです」
刺すようなディンの視線に気まずそうにしながら、フラクタは言った。




