強化勇者(4)
セレスワイズ邸、エントランス。
俺達が帰還すると、ウィンリッヒが使用人達数名と何かを話していた。そして、俺達が魔方陣の中に現れたのに気付くと、振り向いて駆け寄ってきた。
「オーキ!!」
「親父!! 今すぐ屋敷の人間みんな連れて逃げろ!! 潜入は失敗だ!!」
「…いや、その必要は無いだろう。これを見ろ」
ウィンリッヒが何かの書類をオーキに渡すと、俺達はその書かれた内容に目を通した。
「…は? これって…」
「たった今流布されたルクスブルグの情報だ。これが今、五大各国に流されているそうだ」
ウィンリッヒが渡してきた書類の内容を要約すると、
・ルクスブルグはアイオーン侵攻の口実の為、アイオーンが魔族と繋がりがあるとでっち上げた。
・ルクスブルグは魔族の死体を使って、人間を強化する為の人体実験を行っている。
これらの事が纏められていた。ウィンリッヒはオーキが俺達と旅をしているのを知ってから、五大国間の情報に目を光らせていたそうだ。そこに急にこれらの事が流されたのに、いち早く気付いたらしい。
「お前達が流したにしてはあまりにも伝わるのが速すぎると思っていたが…やはり、これを流したのはお前達では無いんだな?」
「ああ、今兵士達に追われて逃げ帰ってきた所だよ」
「そうか。だがこれで、ルクスブルグは各国から非難が殺到してるらしい。アイオーン侵攻の正当性も失われ、立場はかなり厳しくなる。当分は事態の火消しに追われて何も出来んだろう」
「一体、誰がこれを…?」
「誰がこれを流したんだ!!?」
魔術士の転移魔術により城に戻った私は、たった今兵士から聞かされた話の内容に思わず激昂し、怒鳴り声を上げた。
アイオーン侵攻の為の工作についてと、魔族の死体を使った人体実験についてが世界各国に流布されてしまったというのだ。
「恐らく、あの侵入者達だろうね。脱出からすぐにここまで情報を流せるなんて、思ったよりも手が早くて驚いたよ」
「感心しとる場合か貴様はぁ!!!!」
他人事の様に言う魔術士に対し、ブチ切れながら私は怒声を飛ばした。
「しかし不味いよね。五大各国からの非難はそうだけど、実験の事までバレちゃあ…魔族からも怒りを買う、かも?」
「っ…!?」
「もしかしたら…いよいよ『彼』も、貴方を殺しに来るかもしれないよ?」
魔術士の言葉を訊き、私は頭を抱えた。もし今の状態で、ルクスブルグが侵攻を受ければ終わりだ。その絶望の未来が間近に迫ってるのを感じ、頭が痛くなる。
「でも、僕からは良い知らせもある。僕が独自で研究していたあの強化勇者、成功したよ」
「何っ!? 本当か!?」
「あの勇者と魔王のコンビをかなり手こずらせたんだ。それをあの五十人の勇者に同じ改造を施せば、貴方のルクスブルグはどこにも負けないよ。他国にも…魔族にもね」
「そ…そうか…そうだな!! 良くやった魔術士!!」
魔術士の話を訊いて、私は安堵の溜息を洩らした。
「…ここまでは概ね僕達の理想通りになったね、グランディン」
「…そうだな、俺達が流した情報で魔族共の怒りも焚き付けられただろう」
「ふふ…これから世界は荒れそうだ」




