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強化勇者(3)

「!! おい、クウゴ!!」


ディンが突然俺を呼び、強化勇者の死体を指差した。


俺は起き上がると、その勇者の死体に視線を向けた。


「これは…!!?」


真っ二つに裂かれた勇者の身体から、黒い霧の様な物が立ち上り、その身体はボロボロと崩れていく。


やがて身体は消え去り、勇者が身に着けていた物だけがその場に残った。


「消えた…」


まるで魔族が絶命した時の消え方だった。人間の身体に魔族の血肉を組み込むと、その身体は魔族に近付くという事なのだろうか。


「ちっ…!! ハマドウめ、胸糞悪くなる物を作りおって…!!」


霧散した死体を見て、ディンが苦い顔でそう吐き捨てた。


俺も同じ気持ちだった。これは人間と魔族、双方の命を侮辱してる。そして、そんな物をあのハマドウが作ったなんて、俺は未だ信じられずにいた。


(ハマドウ…何でこんな事…)


そうしていると、遠くの方で足音らしき音が聞こえてきた。恐らく、ルクスブルグ兵士の増援だろう。


「雑魚がわらわらと、全員血祭りに…!!」


ディンが戦意を滾らせて兵士を迎え撃とうとするが、俺はディンの手首を掴んで制止した。


「いや、逃げるぞ。ここいらが潮時だ」


「勝手に決めるな!! 奴らを皆殺しにせねば気が済まん!! 離せ!!」


「お前ももう限界だろ!! これ以上は首輪を使ってでも止めるからな!!」


俺はそう言って、首輪による力の抑制を発動する。これでディンは、もうこれ以上戦えない。


「くそっ…!! っておい!! 降ろせ!!」


俺はディンを肩に担ぐと、先程俺が開けた壁の大穴を飛び降り、そのまま城の外へ向けて駆け出した。


「今回、お前の気持ちが少しは理解できたから、多少のおいたは許したんだ…そこんとこ理解しろ」


「…知った風な口を、貴様に何が…!!」


俺の肩の上で、ディンは忌々し気に言葉を洩らした。





俺達が転移魔方陣を設置していた空き家に着くと、その窓から顔を覗かせていたソニアは俺達に気付き、


「あ、クウゴさん達帰ってきました!!」


と、中に居るであろうオーキ達に声を掛けた。


俺達が空き家に入ると、寝そべっていたオーキが身体を起こし、俺達の傍へ駆け寄ってきた。


「よお、どうだった? 見たとこ結構苦戦してたみたいだな…ハマドウ、か?」


オーキが、手傷を負わされている様子の俺達を見て、そう問い掛けてきた。


「…ああ、すまん。ルクスブルグ王には逃げられた、成果はゼロだ…」


「…いや、いい。無事帰って来れて何よりだ。それよりも、一度俺の家に戻りたい」


俺はそれを聞いて頷いた。潜入に失敗し俺達の顔が割れた以上、セレスワイズ家にルクスブルグからどんな報復が来るかわからない。


今後の行動の指針を相談する為にも、確かにセレスワイズ邸に行ってウィンリッヒ達と話し合うべきであろう。


「それから、フラクタさんも俺達と一緒に来て下さい。ここに居ると危険ですからね」


俺がそう言うと、フラクタも頷き、


「わかりました。同行させて下さい」


と、その事に了承する。


セレスワイズ邸のエントランスには、既にオーキがルクスブルグに向かう前に帰還魔術用の魔方陣を設置していた。なのですぐに戻る事が出来る。


「よし、それじゃあ行くぞ…!!」


俺は精神を集中させ、転移魔術を起動する。


こうして俺達は、セレスワイズ邸に向けて帰還した。


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