強化勇者(2)
俺は斬り上げと同時に後ろに跳んで、負傷しているディンの傍まで下がった。
「お前がこんな手こずるなんて…あれってもしかして…」
「ああ、小童が言ってた例の強化された勇者だろう…全く、上手く行ってないと言ってたではないか…!!」
「いや、あれは恐らくハマドウが送り込んだ奴だ…見覚え無いか? あれ、アイオーンの時持ち帰った勇者だ」
自分で言ってて、かつての親友が行った所業を目の当たりにして動揺を抑えられない。勇者を改造など、あのハマドウがこんな非人道的な真似をするなんて、俺は到底信じられずにいた。
「ぐるぅぅぅ…」
なんと、強化勇者は唸り声を上げながら立ち上がった。俺が串刺して斬り裂いた傷は、既に治りつつあった。
勇者紋から加護を得ているとは言え、とんでもない回復力である。
「…見ての通り、奴は生半可な攻撃では死なんぞ。殺しきるなら、もっと強力な攻撃で無いと駄目だ」
「さっきまでへばりかけてた奴が偉そうに…まあいい、俺に考えがある。まだ動けるか?」
「当然、無用な心配だ」
「だったら、今から奴の脚を止める。俺の準備が出来るまで、奴に攻撃し続けて足止めしろ」
俺はそう言うと、イリスを鞘に納めて、その鞘に魔力を溜め始めた。
「ふん、指図されるのは気に入らんが仕方ない…さっさと準備を済ませるんだな」
ディンはそう言うと、床を蹴って強化勇者に向かって突っ込んでいった。そして俺も右手に魔術で石の剣を創り出し、同じく勇者に向かっていった。
「がああぁあああ!!!!」
勇者が叫びながらその剣を振るい、俺達に迎え撃ってきた。俺達はそれらを捌きつつ、足止めの為に攻撃をし続けた。
「うおおおおおお!!!」
「はぁぁぁぁぁぁ!!!」
三者の猛攻がぶつかり続け、お互いその身は少しずつ削られていき辺りには血が舞う。俺も石の剣が何回も折られており、その強化勇者の予想外の破壊力に内心戦慄していた。
「おい!! まだか!! そんなには持たんぞ!!」
この中では力量の劣るディンは、特に手傷を負っていた。先程の負傷もあり、本人の言うとおりもうそんなに持ちそうに無い。
「もう少し…」
俺は攻撃を加えながら、鞘に最大まで魔力を溜めていた。最大の威力で、一気に殺しきる為に。
「!! よし、ディン!! 下がれ」
魔力が、溜まった。俺は手に持っていた石の剣を強化勇者へ投げつける。
「があっ!!!」
強化勇者は石の剣を払い飛ばし、剣は粉々に砕け散った。しかし、足止めできれば充分だった。
鞘に溜めた魔力を解き放ち、同じく魔力を篭めたイリスに上乗せして、抜剣。
「うおおおおおお!!!」
渾身の一振り、ディバイド・エアを繰り出し、強化勇者を縦一文字に両断した。
「…おい、なんで貴様まで倒れてるんだ?」
絶命した勇者と、床に倒れている俺を交互に見比べてディンが言った。
「…理由は見てわかるだろう」
最大チャージで繰り出したディバイド・エアは、強化勇者を両断するだけではなく、壁に大穴を開け、城の外壁にまで破壊が及ぶ程の威力を見せた。
そして、それを繰り出した俺の右腕にもそれだけの負担が掛かり、俺は僅かに意識を失ってしまった。
「おい…俺、大丈夫か…?」
俺がディンに尋ねると、ディンが一瞥して答えた。
「大丈夫だ、刃毀れ一つ無いぞ」
「イリスだけじゃなく、俺の腕も見ろよ…」
俺は小さくぼやくと、深く溜息をついた。




