突入!ルクスブルグ城(1)
そしてその夜、俺達はオーキが指定してきた場所に辿り着いた。
「ここみたいだな…」
俺達が来たのは、城より少し離れた場所にある、一軒の空き家の前であり、そのドアの前にソニアが立っていた。
「こっちです、どうぞ」
ソニアが空き家の戸を開ける。するとそこには、
「魔方陣…!?」
部屋の中央に、転移魔術の魔方陣が描いてあり、その隣に何故か息を切らして床に手をついてるオーキがいた。
「ぜぇっ…ぜぇっ…よお、来たか…」
「オーキ!? どうしたんだ!?」
「俺とソニアを跳ばしたから、魔力…しんどい…悪いけど、今度はお前が起動してくれ…」
(こいつ、城に転移の魔方陣仕込んだのか…)
俺達は全員魔方陣の中に入り、そのまま俺は魔方陣を起動して、陣に登録された場所に向けて跳んだ。
転移完了後、俺達は暗い一室の中の、その中央に敷かれていた魔方陣が描かれたシートの上に降り立った。
「…ここは?」
「城内の使われてない一室、ここなら誰も来ない。みんな、ちょっと退いてくれ」
オーキがそう言うと、俺達はシートの上から退き、オーキはそのシートを畳んで懐に入れた。
「…便利だなそれ、持ち運び出来る魔方陣か?」
「この間漸く作るのに必要な素材が手に入ったから、今回持ってきた。まあ貴重な素材で一枚分しか作れなくて、片っぽはちゃんと陣を用意しないといけないけど…さて、じゃあわかった事を共有しよう」
こうして、オーキはこの城に潜入してわかった事を共有する為、俺達に話した。
まず、この城に今グランディンはいない事。今回は暗殺する事は叶わないという訳だ。
次に、勇者召喚の儀の資料について。これは研究室には無く、オーキが聞いた話によるとルクスブルグ王が管理している可能性が高いとの事だ。
そして、ルクスブルグが行っている実験についてだ。
「勇者の強化?」
「ああ、何でもルクスブルグ王は追加で五十人もの勇者を召喚したらしいんだけど、これがまたヘボ揃いでな、それで勇者を強くする為の研究をしてるんだとさ。んで、その強化の為の材料が…」
「まさか…」
俺がそう言うと、ディンは苦い顔で歯を食いしばっている。
「そう、魔族の死体だ。魔族は一般的に人間よりも強い力を持っている、だからそれを強化パーツとして組み込もうとしてるって訳。ただ、中々上手くいかないみたいだけどな…」
「でも、魔族って普通死ぬと霧散するだろ? 何で死体が消えずに残ってるんだ?」
俺が疑問を投げ掛けると、オーキは自身のこめかみを指差し、
「魔族の肉体の機能を殺さずに、脳の機能だけを上手いこと停止…所謂脳死って奴だ。そうすれば、肉体は生きてるから消える事は無いって訳」
実に残酷で惨い話である。此程までに狂気的な発想を実行するとは、想像しただけでも恐ろしい。それを聞いていたディンはずっと険しい表情をしている。
「それにしても、オーキさん殆ど研究室の中に居ましたよね? どうやってそんなに調べたんですか?」
ソニアが尋ねると、オーキは懐から封魔のカードを取り出した。
「グラナの時に使った分身に散策させてたんだ。視界は共有できるからな、研究室にいながら調べられたよ」
魔力さえあれば本当に多才な男である。ここまで来ると魔術士というより、最早忍者染みてきたなと俺は思った。
「ん…? ちょっと待て、あれって確かかなり魔力使ったよな? 前の時は何か、カード二十枚使ったって…」
「…行動時間を出来るだけ延ばすために、今回更に多めに使った。という訳で、既にカードはカツカツだから、戦闘はほぼ役に立てそうに無いので、宜しく」
オーキはあっけらかんと言った。魔力さえあれば何でも出来る男の、魔力が無くなったとの事だ。
「…もういい、それだけ聞ければ十分だ」
そう言ってディンが部屋を出ようとし、俺はそのディンの肩を掴んで止めた。
「待てディン、何するつもりだ?」
「こんなふざけた城焼くに決まってるだろ!!
一人残らず皆殺しにしてやる!!」
「落ち着けって…!!」
「何か気が立ってんな? 何かあったのか?」
「実は…」
俺は日中に街で出会ったフラクタについて話した。すると、オーキは、
「…そのフラクタって魔族、ここに捕まってるかもしれないぞ?」
と、俺に返した。




