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潜入!ルクスブルグ(3)

「そんな…!!? 師匠…!!?」


俺がグラナであった事と、その似顔絵の男についてを話すと、フラクタは驚愕し口元を手で押さえ、驚きにその目を見開いた。


「…消える直前に見た顔が、その似顔絵とそっくりだったんで恐らくは…」


「…はい、多分クウゴさんが見た魔族は師匠で間違いないかと思います。師匠は結界術や幻術に長けた術士だったので、グラナでそれだけの幻術世界を維持できたのも頷けます…」


そう言うフラクタの表情は暗い。突然恩師の死を伝えられたのだ、無理も無かった。


「それでその男…イストンさんがこれを持っていたんです、渡しておきます」


俺はそう言って、イストンが死に際まで握っていた手記のページをフラクタに渡した。


「これは…!!」


「? それについて、何か知ってるんですか?」


「はい…師匠が以前から調べてた歴史の碑文に、これと同じ物が書かれているのを見た事があります。私も調べるのを手伝っていたから…」


「歴史?」


「はい…人間と魔族、その闘争の歴史です」


フラクタの話によると、イストンは以前から、人間と魔族が争い合い、互いに多くの犠牲が出ている今の状況を憂いていたという。


そして、イストンはこの戦いを無くし、両種族がどうすれば手を取り合えるのかを考えていたそうだ。


しかし、両種族に根付いている憎しみは余りにも大きく、イストンの考えは戦いを望む同種族には受け入れられなかった。


そんな時、イストンは考えた。


この人と魔族の争いは、そもそも何が始まりだったのだろうかと。


そしてイストンは、世界各地を周り、人間と魔族の闘争の切っ掛けとなった憎しみのルーツを調べ始めたのだ。


各地に残された大昔の書物、遺跡、石碑、イストンは兎に角、関係ありそうな物は何でも調べ尽くしたそうだ。


(その一つが…あのグラナの石碑)


恐らくあの時、イストンはあの石碑がグラナに埋まっているのをどこかで知ったのだろう。だからイストンは、あんな幻術世界まで作って、グラナの人々を閉じ込めて人払いをしたのだ。発掘し、それを調べる為に。


「『不和の名を持つ獣、地に降り立つ時、闘争の種火は灯された。気を付けろ、奴は未だこの世界の裏で嗤っている』…師匠はこの文章を、こう推察してます…人間と魔族の争いは、この不和の名を持つ獣によって引き起こされたのではないかと」


「!!」


衝撃の真実。俺はその事に驚きを隠せなかった。


人間と魔族の争いに、元凶が居ると言うのだ。


「この不和の名を持つ獣とは、一体何の事だかはまだ分かりませんが、これは当時を知る昔の人間が残した『警告』なのではないのかとも、師匠は言ってました」


「警告…」


気を付けろ、奴は未だこの世界の裏で嗤っている。


まるで、今でもその元凶が世界を見ているとでも言いたげだと、俺は思った。


「…クウゴさん、ディンさん、貴方達はグラナで師匠が作った幻術世界に行ったそうですね。貴方達から見て、どうでしたか?」


フラクタがそう言うと、俺はあの幻術世界の事を思い出した。


人間と魔族が共に暮らし、共に働き、共に笑い、争いの無い優しい世界だった。


そして、そこに現れた亡霊は、


「ここでは…誰も傷つかない…誰も争わない…私の夢…」


と言っていた。あの世界は、正にイストンが理想としていた世界だったのだろう。


そんな風にイストンに思いを馳せながら、俺はこう答えた。


「…とても、優しい世界でした」


「…そうですか」


俺が答えると、フラクタはそう言って微笑んだ。


「…下らんな」


その直後、不機嫌な面をしたディンは、そう吐き捨てた。

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