潜入!ルクスブルグ(2)
「済みません…私が不用意に言ってしまった所為で…」
女性はそう言うと、頭を下げた。
俺達は先程の場所から離れた所の路地裏に来ていた。何か込み入った話を話したそうであった為、人目に付かない所に移動したのだ。
「申し遅れました。私はフラクタと言いまして…実は私も魔族なんです」
フラクタと名乗ったその女性は、パチンと指を鳴らす。すると、人間だったその姿が突然変わった。
大きな角が生えた頭、強膜が黒色に染まった眼、魔族にはディンの様なほぼ人間と変わらない者もいれば、人間とは大きな差異がある者がいるが、このフラクタは後者の様だった。
そして、もう一度指を鳴らすと、再びその姿は人間に戻った。
「普段はこうして、魔術で姿を『見せ掛け』ています。同じ魔族なので、貴女が魔族だというのはすぐ気付きました」
「では、我々に何の用だ?」
「実は探している人…魔族が居まして、それで同じ魔族なら何か知ってないかと思って声を掛けたんです」
「人探しって、事ですか…」
俺が言うと、フラクタが頷いた。
「最近、このルクスブルグに魔族が出入りしていると噂で聞いて、もしかしたら居るのではないかとこの国に来たんですが…」
(魔族の出入り…か)
俺達が探っている情報の一つに、ルクスブルグと魔族の繋がりを示す証拠があるが、これだけではまだ弱い。
フラクタの探し人の情報を聞いた後に、俺からもその事について何か知らないか詳しく聞こうかと思った。
「それで、その探し人の特徴とかって教えてくれませんか?」
「あ、似顔絵があります。名前はイストンと申します。私の魔術の師匠でして…」
フラクタがその似顔絵を渡してきた。俺が受取り、俺とディンはそれを見てみた。
「!!」
その似顔絵に描かれた男に、俺は見覚えがあった。
(これ…あの時の…!!)
グラナの街、その坑道の中で誰かに襲撃されていて、俺が駆け付けた時には絶命していた男の顔。
グラナの幻術世界に俺達を閉じ込めた、あの亡霊の本体の男がそこに描かれていた。
「勇者の強化?」
研究室にてハンスの説明を受けた俺は、そう言葉を返した。
「ああ。前にルクスブルグが三十人の勇者を召喚したという話は聞いてるだろ?」
「はい、あのアイオーンを落としたって聞きました。けどその後…」
「そう、その後奪い返されて全員戦死してしまった。その結果に陛下は酷くご立腹でね、新たに五十人の勇者を召喚したんだ」
「ご、五十人!?」
それを聞いてソニアが驚いて声を上げた。正直俺も驚いていた。
「しかし、その勇者達はその…以前に召喚した時よりも頼りない様で、それで何か強化する方法を見つけて欲しいとの事なんだ」
(そりゃ五十人もまとめて召喚するからだろ…)
クウゴから聞いた話によると、召喚の儀で複数同時に召喚した場合、それにより与えられる加護の力が人数分だけ分散するとの事だ。
三十人召喚した時よりも弱くなるのは、そりゃ当然と言えるだろう。
「それで我々も何かしらの強化の方法を探してるんだけど、どれも上手く行かなくてね…」
「成る程…でも、中々興味深い研究ですね」
俺も勇者について興味があった。そもそも、俺は元々勇者紋の研究がしたいが為にクウゴに協力していたのだ。しかし、多忙故にその研究は中々本腰入れて行えていないのが現状だ。
潜入捜査は大事だが、これは俺自身の目的を進めるチャンスにもなると思った。
こうして俺達の目的に、勇者についての研究とその研究データの持ち出しが加わった。
「いや、加わったじゃないですよ!何勝手に追加してるんですか!」
後でソニアに怒られた。




