潜入!ルクスブルグ(1)
セレスワイズ邸からリインで飛び立ち、俺達はルクスブルグへと到着した。
街に入る前に、オーキから提案があった。
「潜入は俺とソニアで行く。クウゴとディンは街の中で待機しててくれ」
「…ここで召喚されて顔が割れてる俺は分かるんだが、何でディンまで?」
「アイオーンで会ったハマドウから話は入ってるかも知れないだろ?一応念の為だ」
という訳で、俺とディンは街中で待機し、潜入するオーキ達を待つ事になった。オーキ達が城の中で色々と調べ、その後オーキ達の手引きで俺達も侵入する、そういう算段である。
「…何だその格好は?」
「変装」
俺は顔を包帯でグルグル巻きにして、外套のフードを深く被っている。
顔を見られないに越した事は無い。徹底的に顔を隠しておこうという訳だ。
「というかディン、お前も顔隠せよ」
「我は見た目は人間に近いんだ、問題無い」
「いやオーキが言ってただろ。ハマドウからお前の事も話が入ってるかも知れないって…」
「むぅ、仕方ない…だが、そのグルグル巻きは嫌だ」
そう言って、外套のフードを目深に被った。
こうして、俺とディンは二人街中を散策する事にした。
街道を歩きながら、街の人々の話し声に耳を傾ける。
「また税が上がっただろ?これじゃあウチやってけないよ」
「アンタんところも大変みたいだな、やっぱどこも苦しいみたいだねぇ」
「王様が代わってから、この国は良くない事ばっかだ。どうなるんだろうねこの国は」
店頭で会話していた店主とその客らしき者達の会話を聞き、ディンは小さく呟いた。
「…どうやらこの国の王は、あまり良い王では無いようだな」
召喚した勇者を、隷属の首輪を使って痛みで縛ろうとした奴だ。碌な王では無い事は俺も察していた。
この国の住民達から見た王の印象も、俺と大して変わらない様だ。
そうして街の様子を見ながら歩いていた、そんな時だった。
「あの…済みません、ちょっと宜しいでしょうか?」
突然、後から声を掛けられた。
俺とディンが声の方に振り返る。その声の主は、二十代位の女性であり、魔術士なのだろうか、右手に杖を携えていた。
「はい、何でしょうか?」
「あの…違ってたら申し訳ないのですが、其方の女性、ひょっとして、魔族じゃないですか?」
「!!」
女性が囁く様に小さく言ったのを聞いて、俺とディンが警戒して身構える。イリスの柄に右手を掛けて、いつでも抜剣出来る様にする。
(何でばれた? 見た目は只の人間に変わらないのに…)
身構えた俺達を見て、女性が慌てた素振りを見せた。
「す、済みません!! 別にそれでどうこうしようって訳じゃなくて…ただ、人と魔族が一緒に居るのが珍しくてつい…」
女性が言うと、それを聞いた他の住人達がざわつき始めた。
「今…魔族って言った…?」
「え、魔族? やだぁどこ?」
俺達の周りにどんどん人が集まってくる。このままでは衛兵等も来るかも知れない。
「騒がしくなってきた、場所を変えよう」
俺がそう言うと、ディンとその話し掛けてきた女性が頷き、その場を離れた。
「ようこそ、ルクスブルグ城へ。来てくれて嬉しいよ」
「どうも、これから宜しくお願いします」
城に入った俺は、迎えてくれた先輩研究員と握手を交わした。
「…ところで、其方の彼女は?」
先輩研究員がそう言うと、俺の隣にいたソニアに視線を向けた。
「俺の研究助手として連れて来ました。生憎身体が弱いものでして、その作業のサポートを…ゴホゴホッ」
と、俺はわざと咳をしてみせる。
「は、はい!助手のソニアと申します!」
「そうか、私はこのルクスブルグ城の魔術研究主任のハンスと言う。宜しくソニア君」
そう言って、ハンスはソニアとも握手をした。
「それでは早速研究室に案内しよう。付いて来てくれ」
ハンスがそう言うと歩き出し、俺とソニアもハンスの後を追従し歩き出した。
「いやあ助かったよ。今進めている研究が難航しててね、是非君の様な優秀な魔術士に協力して欲しいと思ってたんだ」
研究室に向かう道すがら、ハンスは話し始めた。
「学校が休みになって、丁度暇だったっすからね。それに、噂の勇者の召喚についても気になってたので」
「そうだったか。でも、実は今研究してるのは勇者召喚では無いんだ」
「え?そうなんですか?」
「ああ。少し前に陛下から依頼されてね、でもこちらも勇者に関係した研究だよ」
「…難航してるって言ってましたね。どんな研究なんですか?」
「それは…着いた、ここが研究室だ。中で話そう」
ハンスはそう言って、研究室のドアのノブに手を掛けた。




