宝剣イリス(5)
昼食後、俺達はお茶を頂いていたところで、ウィンリッヒが話を始めた。
「そういえばオーキ、お前宛にルクスブルグから手紙が来てたぞ」
「手紙?」
「ほら、これだ」
そう言ってウィンリッヒは、オーキにその手紙を差し出した。
オーキがそれを開封し中を確認する。すると、露骨にその表情は嫌悪を剥き出したものに変わった。
「げ…また研究員の勧誘かよ…」
「そういえば、前にもルクスブルグから勧誘があったっていってたな」
俺がそう言うと、ウィンリッヒがその事について補足してくれた。
「ウチのラピスはこういった研究の類は不得手でね、代わりにその息子のオーキにお呼びが掛かるんだ」
「ちょっとウィン!!私は別に研究が出来ない訳では無いのです!! ただ、性に合わないというだけで…!!」
「苦手なのには変わりないんだろ?」
「う…むぅ…」
ウィンリッヒの言葉に、ラピスは言い淀む。
「面倒くせぇ、さっさと断…いや、待てよ?」
「?」
「これ…ちょっと受けてみようかなって思ってさ…」
「は?」
「だってさ、これチャンスじゃね?ルクスブルグの懐に潜り込めるんだぜ?そこでいろいろやりたい放題だぜ?」
「詳しく」
俺がそう言うと、オーキが説明を始めた。
誘いを受けたオーキが研究員としてルクスブルグに潜入し、そうすれば中で色々と情報を集めたり、俺達を中から手引きしたり出来るとの事だ。
「な?悪くねぇだろ? そうすれば出来ることがいくつかある」
・一つ、勇者召喚の儀の資料の奪還。
これを奪い、何かしらのバックアップ諸共抹消出来れば、ルクスブルグは勇者を召喚する術を失い、勇者召喚で戦力の増強するのを防げる。
・二つ、ルクスブルグの魔族との繋がりを調べること。
ルクスブルグはアイオーンが魔族との繋がりがあったとして侵略を開始した。もしルクスブルグに魔族との繋がりがあり、それを広める事が出来れば、その大義名分を失い、ルクスブルグはその事を各国から非難されるだろう。
そうなれば、現状魔族との繋がりがあると吹聴されているアイオーンの立場の回復に繋がり、他国からアイオーンへの支援がやりやすくなるかも知れない。
・三つ、それはグランディンの暗殺である。
現状ルクスブルグと繋がりがある可能性があるグランディンは、ルクスブルグ城にいる可能性がある。研究員として潜入したオーキが手引きすれば、容易に暗殺する事が可能かもしれないのだ。
「もしこれでグランディンを暗殺出来れば、それでこの戦いはジエンドだ。どう、良くね?」
そのプランを聞いたディンが、腕を組みながら鼻で嗤う。
「ふん、それであの偽物を倒せても、次は我が次の魔王に返り咲くだけだがな」
「…お前今、クウゴに生殺与奪の権握られてるの忘れてね?力封じられて、瞬殺よ」
「煩い!! くそっ、力さえ戻れば…!!」
忌忌しげにディンが唸った。
確かにそうなれば、悪くない話だ。しかしそれでは、
「もし失敗したら、お前の実家にかなり迷惑が掛かるんじゃ…最悪ルクスブルグに潰される可能性も…」
「その点は心配しなくて大丈夫です」
俺の懸念に返してきたのは、ラピス夫人だ。
「仮に失敗してウチに攻めて来ようとも、私一人で返り討ちよ。ふふふ…久し振りに腕か鳴るわ」
「ええ…」
邪悪な笑みを浮かべるラピス夫人を見て、俺は絶句した。
「…お前の母親、どうなってんだ?」
俺は小さくオーキに耳打ちすると、オーキは肩を竦めた。
「まぁ、歴代セレスワイズ当主の中でも、特に血の気の多い問題児だったそうだし? この分じゃ親父が貰わなかったら、今頃嫁の貰い手なんって痛だだだだだだだ!!!!?」
オーキが言い終わる前に、ラピス夫人が後頭部をアイアンクローで掴みそのまま吊り上げた。
「誰が!!何だってぇ!!?」
「そういうとこだろうがクソババア!!」
こうして、俺達の次の目的は、ルクスブルグ潜入に決定した。




