宝剣イリス(4)
俺達はセレスワイズ邸に泊めて貰い、その次の日、俺はウィンリッヒからイリスを受け取った。
そして今、屋敷の庭園にて俺達四人と、ウィンリッヒ、それからラピス夫人も集まってきていた。
「ふぅ…」
俺は脱力し、腰に納めていたイリスに手を掛ける。そして、
「はぁっ!!」
一気に抜剣した。
頭の中で動きをイメージし、その通りに剣を振るう。そして、その真価を身を以て体感した。
(軽い…!! ここまで綺麗に振れるのは初めてだ…!!)
鞘に手を掛けた時から感じていたその力に、俺は驚嘆した。
剣が羽根の様に軽い、いくら振るっても全く疲れない、魔力が淀みなく全身を駆け巡る、俺は繰り出す一挙手一投足に常に、どこか『心地良さ』を感じていた。
「凄い…これがイリスの力…」
「その剣には、女神イリスをモチーフとした『調和』の力が宿っていて、それにより使用者のコンディションを常に万全に仕上げてくれる」
ウィンリッヒがそう言って、イリスの力について補足してくれた。
つまり、ゲームで言うと使用者に常にバフと回復を施してくれるという物である。
「勿論刀剣としても優れている。切れ味、強度、どれを取っても一級品だ。そして…」
ウィンリッヒが俺の腰の鞘を指差す。これはイリスを受け取った時に一緒に渡された物だ。
「その鞘にはオーキの封魔のカードと同じ様に、魔力を溜めておける。これを抜剣と同時に解放する事で、剣の威力を大きく上げてくれる。あって困るものではない筈だ、ぜひ有効活用して欲しい」
「ありがとうございます。でも、宜しいんでしょうか? こんな大事な剣、俺に使わせても…」
「勿論だ。君の事はオーキから聞いている、大きな使命があるんだろう? その剣で多くの人々を救って欲しい、それが私の願いだ」
「分かりました…オーキも、良いのか?」
「ああ、元々お前の剣を探す目的だったしな。グランディンをぶっ倒すまではお前に預けといてやるよ」
「オーキ、ありがとう…」
「それにしても、まさかオーキが勇者と一緒に旅をしていたなんて…」
ラピス夫人がオーキを一瞥しながらそう言うと、今度は俺の方を向いて頭を下げた。
「クウゴさん、どうかその剣と共にこの愚息の事も宜しくお願いします。中々気難しくて捻くれた子ですが、根は優しい子なのでどうか仲良く…」
「おいお袋、そういうの止めろって」
「実際そうじゃない、貴方今まで碌に友達も出来た事無かったでしょう、だから母さん心配なのよ」
「いらん心配だっつーの!!」
「大丈夫ですよ、ラピスさん。オーキが優しい子だってのは、俺達みんな知ってるんで。なぁ?」
俺がそう言って、後に振り返る。ソニアはそれに頷いてくれた。ディンは腕を組んでそっぽ向いていたが。
「けっ…」
オーキがそれを見て照れ臭そうに顔を背け、ラピス夫人は小さく笑った。
そうしてると、使用人が一人此方に来た。
「皆様、昼食の用意が出来ました。屋敷の方へ」
その使用人が伝えると、俺達は屋敷へと向かった。
「親父…お袋…」
その途中、オーキが両親を呼び止めた。
「呪いは、まだ全部解けてない…だから、見ててくれ…」
そんなオーキの言葉が、俺は背中越しに聞こえた。




