呪いの真相と少女の声(5)
次の日、俺達はヴォルカの街を駆け回っていた。
それは、イリスを修復する為。どうにか治して上げたいと思っていた俺達は、街の職人達に片っ端から声を掛けていった。
しかし、どの職人達に声を掛けても、首を縦には振らなかった。
「済まないな…これは儂にもどうにも出来ん…」
今し方声を掛けた、ギデオン騎士団長が推していたマグヌス氏も、この通りであった。
何でも、イリスの剣は、それがどの様にして造られたのか、まるで検討がつかない程に謎の技術で造られた代物である様で、屈指の技術を誇るヴォルカの職人達でさえ手が付けられないとの事であった。
その後、俺達は拠点の街に戻り、オーキの魔術工房の中に集まっていた。
オーキがイリスの柄を、その各部位を確認する様に見まわしていく。そして、それを机の上に置いて深く溜息をついた。
「…どうだ?」
俺が尋ねると、オーキは首を横に振った
「駄目だ…目釘の1本も見当たらない。どうやって組み立てたのかもまるで分からん」
「そうか…」
「茎に銘でも彫ってありゃ、制作者の子孫でも見つける手掛かりになると思ったんだけどな…」
「他に何か手掛かりになりそうなものは…?」
「あったとしても流石に表には彫らないだろ。見つけるにはやっぱ、分解しない事には…」
「? あれ、ちょっと待って下さい。これ…」
何かに気付いたソニアが、イリスの柄頭を指差してみせた。
「この飾りのクリスタル、何かおかしくないですか?ランプの光に当たって、何か…」
ソニアがそう言うと、俺達はイリスの柄頭に填め込まれていたクリスタルを見てみる。
それは、ランプの光が当たって、クリスタルを通して机上に何かが映し出されていた。ソニアが言う様に、確かに何かおかしい。
「もしかして…!!」
オーキがイリスの柄を持ち上げ、ランプをクリスタルに当てながらイリスの高さを調整する。
すると、クリスタルを通して映し出されていたものがハッキリと浮かび上がった。
それは、制作者の名前らしき文字であった。クリスタルに光を通すと、こうして浮かび上がる様な仕組みになっていたみたいだ。
「この名前は…!!」
それを見て、オーキが何かに気付いた様で、ハッとなった表情を浮かべた。
「みんな!!すぐに行くぞ!!」
「行くって、どこに?」
「俺の実家だ!!」
オーキに言われるがままにリインを飛ばし、俺達はオーキの実家である屋敷に来ていた。
「うわぁ…大きい…」
ソニアが見えてきたオーキの家を見て、言葉を漏らした。
確かにデカかった。広い敷地に綺麗な庭園、そして見るからに豪華な造りとわかる建物。正に、漫画で出てくる様な金持ちが住んでいる屋敷そのものであった。
「ソニア、リインを庭に降ろせ」
オーキが言うと、ソニアはリインを庭に近づけようとする。すると、何やら使用人らしき人間達が集まって来た。
「ぼ、ぼっちゃま!?」
「じいや!!ちょっと降りるからみんな下がらせろ!!」
オーキがそう言うと、そのじいやと呼ばれた男が他の使用人達を下がらせ、俺達は着地した。
「じいや、親父はいるか?」
「は、はい。旦那様でしたら現在書斎にいるかと…」
「わかった。みんな、行くぞ!!」
こうしてオーキの案内により、俺達は屋敷の書斎に向かった。
書斎に入ると、男が1人何かしらの執務だろうか、書類を書いていた。そして、訪室したオーキに気付き振り向いてきた。
「オーキ!帰ってきたのか!学校が休校になってから、碌に連絡も寄こさないで、私も母さんも心配したぞ」
この反応からして、恐らくこの男がオーキの父親なのだろう。
「今はそんな話はいい、これを見せに来たんだ」
オーキはそう言って、イリスを取り出してそれを前に突き出した。
「その剣!! どこでこれを…!!?」
イリスを見て、オーキの父親はあからさまに驚愕の表情を浮かべた。
「その反応、やっぱ何か知ってんだな…この剣について」
「…」
「コイツの柄頭のクリスタル、光を当てると文字が浮かんでくる。そしてその文字は、こう書かれていた」
オーキが指に灯した炎の魔術で、クリスタルを照らした。そして、浮かび上がった文字は、
『ウィンリッヒ・バーンライト』
「アンタの名前はウィンリッヒ。そして、アンタ婿養子だったよな…その旧姓が、バーンライト」
「え、それって…!?」
俺はそれを訊いてギョッとしたが、オーキは続けた。
「同姓同名?確かに有り得なくはない、でも俺はこれを見て、どうしてもこれが他人の名前に思えなかった。そしてこうして見せてみれば、その反応だ」
「…」
「何で遙か昔に造られたこの剣に、アンタの名前が書かれてるんだ!!」
オーキは父に問い掛けた。




