呪いの真相と少女の声(4)
黒イリスを小舟の上に連れて来て寝かせると、クウゴが俺に魔力を流して、それを使って俺が回復魔術で治療した。
「…よし、終わりだ」
黒イリスの負傷は軽い火傷程度であり、治療はすぐに終わった。
思った通り、あれは呪いの力が暴走していただけで、黒イリスは殆ど魔力を発していなかった。なので、黒イリスは聖なる炎に包まれても自身は殆ど焼かれずに済んだのだ。
聖なる炎に呪いを焼き尽くされたからか、もう呪いに苦しんでいる様子も無く、安らかに寝息を立てていた。
「凄いな…俺が同じ治療したら倍くらい魔力使ってた」
「お前の回復魔術は無駄が多過ぎる、もっと効率良く出来る筈だぜ」
「…精進します」
「…ありがとう、パパ」
イリスがお礼を言うと、寝ている黒イリスの傍に来て、その頭を撫でる。
「この子は、ずっと苦しんでたの…独りぼっちでずっと…でも、これでもう大丈夫…この子も…私…も」
そうして、突然イリスがよろめく。それを俺が抱き止めた。
「イリス…お前!!?」
すると、イリスの身体が淡く発光し、その身体は何だか透けている様に見えた。
黒イリスの身体にも同様の事が起こっており、共に段々と、その輪郭が曖昧になってきている。
「私も、長いこと独りぼっちだったの…この子と離れ離れになってから…ずっと、ずっと…でも、この子を放っておけないって…どうにか消えない様に頑張ったけど…でも…それももうだめみたい…」
「イリス…」
「でも…最後に会わせてくれて、ありがとう…救ってくれて、ありがとう…もう…」
イリスの身体が、更に薄くなっていく。そして、
「バイバイ、パパ…楽しかったよ」
「!! イリス!!?」
最後に笑顔を浮かべ、イリスの姿は消え去った。
「…」
突然の別れに、俺達は何も考えられなくなり、只放心していた。
「…?」
膝に何か当たった。俺が視線を向けると、イリスが居た場所には、刀身が折れた剣の柄が転がっていた。
それを拾い上げて見てみる。それは、折れてからかなりの長い年月が経ってる様に見えた。
「オーキ!これ…!」
そして、クウゴが黒イリスが居た場所にあった物を拾い上げ、俺に渡してきた。
それは、折れた剣の刀身であった。破面の様子から、この剣の刀身である事に間違い無さそうだった。
「この剣…!!」
俺はこの折れた剣に見覚えがあった。
夢の中で、ある男が制作して、そして、何物かによって折られた剣。
「なぁ、オーキ…ひょっとして、イリスは…」
クウゴが言うと、俺はそれに対して頷いた。
「ああ、そうだな…でも、最後に漸く会えたんだ…」
俺はそう言ってその剣、イリスを抱き締めた。多分今、涙で酷い顔になっている。俺はその顔を皆に見せない様に、深く俯いた。
その後、俺達はヴォルカの街に戻ると、呪いで苦しんでいた人達は皆完治していた。
これでもう、誰も呪いに掛かって苦しむ人は出ない事だろう。
こうして、ヴォルカの街の呪い騒動は幕を閉じたのだった。




