呪いの真相と少女の声(3)
黒イリスの魔力を辿り、俺達はイリスが倒れていた海岸に来ていた。
そこの近くの入り組んだ岩礁がある場所に、海水が流れ込んでいる亀裂がある岩壁があった。小舟があれば、先に進めそうだった。
俺が感知したのは、この海底洞窟の先だった。
俺達は小舟を借りてきて、その海底洞窟へと入っていった。
指先に灯した炎の魔術で辺りを照らしながら前へ進む。そうして、暫く進んだ先に、随分と開け他場所に出た。
「うわぁ…広い」
それを見てソニアが思わず声を漏らした。
リインか元のサイズで余裕で飛び回れそうなくらいの広さだ。このヴォルカの街の近くにここまでの地下空洞があるなんて思わなかった。
「!! いたぞ!!」
ディンが指差した先を皆一斉に見る。すると、そこにいた。
空洞の中央の岩の上で、街で見掛けたのと同じ、黒いモヤが纏わりついた少女の姿がそこにあった。
「たす…けて…」
こちらに気付いた少女が、手を伸ばそうとする。
すると、それに呼応したのか、周りの黒いモヤが突然暴れ出した。
「…来るぞ!!」
黒いモヤは集まっていき、それは少女の身体を飲み込んで巨大な八の頭を持つ大蛇の化け物へと姿を変えたのだった。
「GYAAAAAAOOOO!!!!」
「…助けるよ」
オーキはそう呟くと、すかさず右手の指先から魔弾を放った。
魔弾は大蛇の頭の一つを貫き、その頭は痛みに悶える様に大きく揺れた。
「GYAAAAAAAA!!!!」
「攻撃が当たった…!!」
「あれが本体と見て間違いないみたいだな…なら!!」
ディンが魔力を込め、右手を翳した。
「魔王権能…爆ぜろ!!」
魔王の権能が炸裂し、爆炎がその大蛇の頭を纏めて三つ吹き飛ばした。
しかし、
「!! さ、再生してる!!?」
オーキに貫かれた頭も、ディンに吹き飛ばされた頭も、再び黒いモヤが集まっていき、すぐに元通りに再生してしまった。
すると、大蛇はこちらに向けてその首を伸ばしてきた。
「ソニア!! リインで船ごと飛べ!!」
「は、はい!!」
オーキが言うと、ソニアはリインを元のサイズに戻し、小舟を掴んで飛翔させた。文字通り牙を剥いて向かってきた大蛇の頭は空を切った。
「あ、あぶなかった…」
すぐそこまで迫っていた大蛇の首を見て、肝を冷やしたソニアは深く息をついた。
「しかしどうする…?あの様子じゃいくら攻撃しても切りが無いぞ」
確かにディンの言う通りだ。このまま攻撃し続けても終わりがない。恐らく、あの黒イリスの呪いを解かなければいけないのだろう。
「いや、策はある」
そこでオーキが口を開いた。
「ソニア、ギリギリまであの蛇本体まで近づけ。クウゴとディンは蛇の攻撃をいなし続けてくれ」
「はい!分かりました!」
ソニアは返事をすると、リインを大蛇に向けて飛ばした。
「…分かった、頼んだぞオーキ」
「良いだろう、やるからにはしくじるなよ」
俺とディンも、大蛇の攻撃に備え構えた。
「GYAAAAAAAA!!!!」
大蛇の首が飛翔するリインに迫り、それらはリインが回避していく。
それで躱しきれない分は、俺とディンが捌いていく。
そして、大蛇の本体のすぐ近くまで来た、その時だった。
「これでっ!!」
オーキは一枚の、封魔のカードを放り投げた。それが大蛇の身体に貼り付いた。その瞬間、
「今だ!!」
封魔のカードの魔力を、解き放った。すると、カードから突然、白い炎が噴き出した。
「よし、離れろ!!」
オーキが言うと、リインはすぐさま大蛇から離れた。
「GYAAAAAAAA!!!!」
大蛇は瞬く間にその白い炎、アイオーンの魔術書にあった、聖なる炎に包まれた。
(よし、上手く行った!)
俺があの大蛇に投げ込んだ封魔のカードには、アイオーンで手に入れた魔術書に記されていた、聖なる炎を呼び出す術の術式が書き込まれていた。
直接使用すると、術者自身の魔力に反応して自分自身も焼き尽くしてしまう聖なる炎だが、こうして術式を書き込んでおいて遠隔で起動すれば、術者に飛び火せずに使用する事が可能なのである。
「GYAAAAAAAA!!!!」
炎に焼かれた大蛇が、苦しみにのたうち回る様に大きく身体を動かしている。
(…荒療治ですまない、後で治療はするからな)
魔術書にあった聖なる炎の本当の使い方、それは、生物を蝕む呪い等の悪しき力を浄化する事。
だから、呪いの塊であるあの大蛇も、再生させる事無く倒す事が出来る筈である。
こうして、大蛇の身体は白い炎に焼かれていき、そこには、
「う…うぅ…」
炎が消えた後、黒イリスだけが残り、岩の上に倒れていたのだった。




