呪いの真相と少女の声(2)
気が付くと、俺は見知らぬ場所に居た。
工房、だろうか。誰かが金床に向かって金槌を振り下ろしている。
そして、急に視界が切り替わる。
誰かが一本の剣を掲げていた。先程誰かが打っていたものだろうか。
その剣は、思わず見惚れてしまい目が離せなくなる程に美しく、どこか超然とした得体の知れないものを感じ、そして、どこか安らぎを与えてくれる様な心地良さを感じる、不思議な剣であった。
そして、更に視界が切り替わる。
嗤い声が聞こえた。そして、何者かのどこか邪悪な笑みを浮かべた貌が見えた。
そして、先程の剣が折られてしまい、刀身と柄が離れ離れになり、それらはどこか、暗い暗い闇へと沈んでいく。
そんな、光景が見えた。
「…ん?」
気が付くと、俺の視界の中に、俺の顔を覗き込んでいたイリスがいた。心配そうな顔で、俺の事を見ていた。
「良かった…パパ!!」
そう言ってイリスは目に涙を浮かべ、俺の胸に飛び込んだ。
話を聞くと、俺はあの黒い少女の呪いを受けて倒れてしまい、その呪いはイリスが治してくれたという。
俺同様に呪いを受けたソニアとリインはすぐ目覚めたのだが、俺だけがすぐには目覚めなかった為、こうして宿屋のベッドに運び込まれたというのだ。
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
イリスが泣きながら俺の胸で呟いていた。
「…どうして謝ってんだ?」
「パパのお願い…破ったから…」
「助けてくれて怒る訳無いだろ…助けてくれて、ありがとな」
そう言って微笑みかけ、イリスの頭を撫でた。
「でも…思い出したの…全部…私の所為だった…」
「え…?」
イリス曰く、あの黒い少女はイリスの別れた半身なのだそうだ。
イリスは二人に別れる前に呪いを受け、その半身は今もその呪いによって苦しみ続けているのだという。
「あの子…ずっと苦しんでた…ずっと…誰かに助けて欲しくて…」
「だから『助けて』か…」
クウゴもどこかで聞いたのかそう呟くと、俺も思い出した。
あの黒い少女が夢に出た時、確かに言っていた。助けてと。
この呪いの騒動の真相、それは、一人の呪いに苦しむ少女、彼女が助けを求めて彷徨い意図せずに振りまいてしまった呪いの飛び火によるものであったのだ。
「…イリス」
俺はイリスに声を掛けると、イリスは顔を上げて俺に視線を向けた。
「その子を助けよう、呪いから…苦しみから解放するんだ」
「それじゃ、始めてくれ」
「わかった」
俺は頷くと、目を瞑り精神を集中した。
自身の全神経を魔力で強化して全力で研ぎ澄ませ、街とその周辺全域を対象に感知を行っている。そして、その感知の対象はあの黒い少女。
オーキの話によると、こうだ。
「あの黒イリスに攻撃が当たんなかったのは、実体がそもそも無かったからだ。恐らく本体は別に居て、それもそんなに遠くない、精々この街もしくはその周辺だろうよ」
「でも感知はもう何回もやってるだろ?それで今まで見つからなかったものが、これで急に見つかるなんて事…」
俺がそう言うと、オーキはイリスに視線を向けた。
「そこでイリスだ。イリス、お前にお願いがある」
「?」
「お前の半身に向けて、強く念じてみてくれないか?どこにいる?いたら返事してって」
「わ、わかった」
イリスはそう言って目を瞑った。
その様子を見たディンが、訝しげな視線でオーキを見て、
「何だそれは?例え半身でも、念じるだけで返事が来たりするのか?根拠はあるのか?」
「…元は同じ人間だった分かたれた魂ってのは、それだけ強い繋がりがあるんだよ」
「ふん…あたかも良く知ってる様な物言いだな。何か前例でもあるのか?」
「…さてね、でもこれで黒イリスに何かしらの反応があれば、クウゴの探知に引っ掛かる筈だ…」
「お願い…どこにいるの…応えて…」
イリスが目を瞑りながらブツブツと呟く。そして、
(!!)
俺の感知に、イリスと同じ魔力を感知した。オーキの言う通り、まるでイリスの呼び掛けに呼応する様に現れた様に感じた。
「いた!! こっちだ!!」
俺が呼び掛けると、皆一斉にその場所へと向かった。




