少女イリス(5)
「あっ、クウゴさーん」
俺が店に入ろうとすると、それに気付いたソニアが俺の下に駆け寄ってきた。
「おう、調査の成果はどう?」
俺が尋ねると、ソニアは首を横に振った。
「だめですね…呪いを受けた人の関係者に色々と聞いてたんですけど、新たに分かったことは特には…」
「そうか」
「クウゴさんはどうですか?」
「俺は…これから次第だな」
そう言って、入ろうとした店の戸を開けた。
「いらっしゃい…ああ、君は昨日の」
ここは道具屋だ。そして、今俺に声を掛けたこの店主の男こそ、昨日呪いを受けて運ばれて、イリスに治された男だ。
「どうも、あれから調子はどうですか?」
「お陰様で、もう何ともないよ。昨日は本当にありがとう」
「自分は何も…助けたのはイリスですから。それより、訊きたいことがあるんですが宜しいでしょうか?」
呪いに掛かった当事者なら、何か知ってるかもしれない。なので俺はそう思って、こうしてその店主を探し出し、呪いに掛かった瞬間について質問しようとしたのだった。
「成る程、あれは病気ではなく魔術の呪いだったのか…いや済まないね、分かることは特にこれと言って…」
「何か、違和感に感じた事とかありませんでしたか?近くに誰かいたとか…」
「と、言われてもね…」
店主の男はそう言って一度深く考え込む。すると、何かを思い出したかの様に一瞬だけ目を見開き、口を開いた。
「あ、そう言えば…何か、声が聞こえた気がする…」
「声?」
「聞き間違いで無ければ…確か、助けてって…」
道具屋の店主の話を聞いた後、俺とソニアは宿屋に戻っていた。
「結局、大した事は分からなかったな…」
「そうですね…」
すると、俺達のいた部屋の戸が開いた。そこには、
「く…クウゴ…ここに居たか…」
酷い顔色をしたディンが、ドア枠に持たれる様にして立っていた。
「ディン!!」
俺とソニアはディンの傍に駆け寄った。その皮膚の色は灰色に変色しており、身体にはおかしな魔力が流れてる様に見えた。明らかに、例の呪いの症状であった。
「くそ…やられた…!!」
「ディン、何があったんだ!? えっと…」
俺はすかさず、回復魔術を使おうとしたが、一度思案してそれは一旦止めた。
俺の回復魔術が治せるのは外傷だけであり、呪いの類いは治せないからだ。
なのでどうすれば良いか、俺はその判断を決め倦ねていた。
そこでディンが、
「馬鹿者…!!そんなのは良い…早く…首輪を…!!」
と言った。俺はそこで、ディンの首輪の抑制を解除した。
「…よし、はぁっ!!!!」
すると、ディンが自身の魔力を練り上げそれを解き放った。
ディンの身体には流れていたおかしな魔力はかき消され、肌の色も見る見る内に戻っていった。
「この程度の呪い、力さえ万全なら恐るるに足らない。それよりも、小童はどこだ?」
「…オーキなら、まだ戻って無いけど?」
「すぐ探すぞ!このままでは小童が危ない!」
「オーキが?何でだ?」
「我をこうしたのは、あのイリスとかいう小娘だ!」
「はぁっ!!?」
ディンの言葉には耳を疑ったが、ディンは宿屋を飛び出していき、俺達もその後に続いた。




