少女イリス(3)
その後、クウゴのいらん事の所為で俺とイリスは同じ部屋で寝る事になったのだが、
(…やっぱりこうなったか)
俺の隣、同じベッドでイリスは寝ていた。先程まで俺のベッドに潜り込んで元気良くお喋りしていたイリスは、疲れ果ててそのまま寝てしまった。
俺は隣のベッドに移ろうとするも、イリスはそんな俺の服をぎゅっと掴み、離す素振りを見せない。
仕方ないので、俺はこのまま寝る事にしたのだ。
(んで、結局コイツ何者なんだろうな…?)
何であんなところで倒れてたのか、何であんな呪いの治療が出来るのか、謎は尽きなかったが、今日はもう何だかんだ考える気が起きなかった。
そうして俺はだんだん意識が薄れていき、やがて眠りに就いた。
(…あれ?)
気が付くと、俺はどこか暗い場所にいた。
身体の感覚はどこか朧気であり、どこか夢見心地な気分であった。
俺はそんな暗い場所の中を歩いていた。そして、それはそこにいた。
何やら黒っぽい人影の様なものが見え、俺はそれに近付こうとする。
すると、そこで異変が起きた。
「うわっ…!!?」
突如、その黒い人影の周りで黒いモヤが噴き出し、それらがそいつの周りを渦巻き始め、辺りは黒い嵐が吹き荒れた。
俺はその黒い嵐に押し返され、大きく吹っ飛ばされてしまった。
そして、その時一瞬だけ、聞こえた気がした。
助けて、と。
「はっ…!!」
目が覚めた時、既に夜は明けていて、窓からは朝日が差していた。
(今のは…夢?)
俺は隣のイリスに目を向けると、相変わらずイリスは気持ち良さそうにスヤスヤと寝息を立てていた。
そこで、俺はあの夢の中で見た黒い人影をふと思い出した。
あの時、吹っ飛ばされまいと踏ん張り、抗うのに必死でちゃんと見えた訳ではないのだが、その姿はどこか、イリスに似ている様な気がした。
朝、俺達は街の食堂に来ていた。そして、
「おいしー!!」
「ほら、いくら美味しいからって慌てんな、ご飯は逃げないからもっとゆっくり食べろ。ああほら、服に付くぞ」
食事中、元気に朝食を平らげるイリスの隣で、オーキが世話を焼いている。俺らはそれを見ながら各々の食事を摂っていた。
「よし、食べ終わったら、御馳走様でした、だ」
「御馳走様でした!!」
オーキが手を合わせて言うと、イリスもそれに見習って同じ様に手を合わせて言った。
「なんか、昨日の今日ですっかりパパが板についたな…」
「はっ…!?」
今更何をハッとなっているのだろうか、オーキの面倒見の良さはきっと根っからのものなんだろうなと、俺は思った。
オーキは取り繕う様に一回咳払いすると、続けた。
「兎に角! 取り敢えず、現状呪いについて分かっている事は少ない。これが解決しないときっと剣の製作依頼どころじゃないだろうな。なので、手分けして調査しよう」
オーキの提案に、俺達は頷いた。すると、
「パパ!あっち行ってみたい!」
と言って、イリスが席を立ったオーキの手を引っぱった。
「あだだだ!!分かったから!!じゃあ、正午に一旦宿屋に集合な!!」
そうしてオーキは、イリスに手を引かれて食堂を後にした。
「ふん、この分じゃあの小童は調査の戦力にならんな」
オーキの背を見てディンが鼻で嗤った。
こうして各自、この街の呪いについて調査を開始したのだった。




