力を求めて(3)
アイオーンから拠点に戻った頃には、既に夜が更けていた。
明日エルーシャとグラナにアイオーンの支援の相談に行くため、それに備えてもう休むことにした。
「…」
頭の中で色々な事が駆け巡り、とてもじゃないが寝付けなかった。俺は気分転換の為、ベッドから身体を起こした。
「…便所か?」
床で寝ていたディンが小さな声で言った。
「…ちょっと寝付けないから気分転換。ベッド、使いたきゃ使って良いぞ」
そう言って、俺は客室を後にした。
平屋から外に出て、ある程度開けた場所に来ると、俺は腰の剣を引き抜き、
「ふっ!!」
振るった。月明かりを映す銀の残像が、夜の闇の中を奔った。
「はっ!ふっ!やっ!」
構え、剣線、一つ一つの挙動を頭の中で確認しながら、イメージした通りに剣を振るう。幾度も、幾度も、自身の迷いを振り切るように。
そして、『敵』をイメージし、そこにすかさず一刀を繰り出した。
「!!」
しかし、繰り出した剣は止まった。止めてしまった。
イメージした『敵』、今日アイオーン城で会ったハマドウを前に、思わず剣を止めてしまったのだ。
(ハマドウ…)
ハマドウが何故魔王と一緒にいたのか、何故100年後の今も生きているのか、その疑問は尽きないが、これだけはハッキリしている。
人類の敵に回るのであれば、斬らなければならない。
しかし、出来るのか自分に。こうしてイメージしただけでも躊躇ってしまう自分に。
不安だった。自分に、ハマドウが斬れるのか。
「よう」
声がした方に振り返る。オーキがそこにいた。
「起きてたのか」
「家の前でフンフンやってたのが聞こえたから、気になったんだよ」
「工房にも聞こえてたのか?」
「いや、便所行く時に聞こえたんだ」
「そうか…」
「あーその、何だ、何かムシャクシャしてるよな、アイオーンから帰ってから…ハマドウの件、じゃねえか?」
「!!」
「俺もお前から聞いた時驚いたよ。何十年も前に亡くなってた大魔術士が生きていて、しかも魔王の側近って、正直耳を疑ったよ」
「…」
「だから俺、これは言っとこうと思ってな」
そう言ってオーキは、サムズアップした親指で自分を差した。
「ハマドウは俺がやる。だからお前は手出すな」
「は?」
「お前はグランディンを倒す事だけ考えろ、お前が出来ない事は俺がやる…お前に親友は、殺させない」
「オーキ…」
「んじゃ、言いたい事言ったんで、俺はもう寝まーす。お前もぼちぼち休んどけよ」
そう言ってオーキは、工房へと消えていった。
(オーキ、ありがとう…)
俺は剣を鞘に収め、平屋に戻った。
工房にて、俺は机に置いてある一冊の魔術書を手に取った。今日、アイオーンで貰った聖なる炎の魔術書だ。
(クウゴにあんな事言ったんだ。俺も、強くならないとな)
幾人の魔術士を焼き尽くしたという、現状手に余るその力。もし使える様になれば、この先役に立つ力になるだろう。
来るべき、大魔術士との戦いに備え、少しでも力を付けておきたい。だから、俺も出来る事は全てやっていこうと思う。
俺はそう思って、魔術書を開いた。




