アイオーン解放戦(5)
「な、なん…で…」
目の前の光景により、俺の思考が上手く働かなくなっていた。
あれから、100年経っているのにもにも拘わらず、そこにはあの時から何も変わらない、いや変わらなさ過ぎる親友の姿がそこにあることに、俺の脳はそれを処理できないでいた。
いや、それよりも、信じられないものがそこにあり、俺の中である問いが繰り返された。
何で隣に、『そいつ』がいるのだと。
俺はハマドウの隣にいつの間にか現れた、筋骨隆々な体格を持ち、その顔を仮面で隠していた男に目をやった。
「貴様…何故それを持っている…!?」
ディンは、ハマドウの隣に立っていた男の手に持つ、一振りの『剣』を見て、その怒気を言葉に乗せた。
その剣は、かつて魔王が振るっていた魔剣。
そして、その魔剣の名は『ジオ・グランディン』という。
幾度も魔王と殺し合った経験がある俺は、その事を当然知っていた。そして、その事から俺は、ハマドウの隣の男が誰なのかを察した。
そして、それはその通りであった。
「何故か…?それは、俺が魔王グランディンだからだ」
今、侵攻している魔族を束ねている魔王グランディン、目の前のこの男がそれであった。
「ハハハ、まさか本物の魔王がクウゴと一緒にいるとはね」
ハマドウが笑うと、グランディンがそのハマドウに振り向いた。
「では…この女が…」
「そうだよ。彼女が本物のグランディンだよ」
「そうだ!!」
ディンは声を上げ、グランディン(偽)に指を差した。
「我を騙る偽物め!!ここで会ったが100年目!!ここで決着をつけてやる!!」
「まぁ待ってよ」
二人の魔王が身構えると、ハマドウが間に入り制止した。
「今日僕らは戦いに来た訳じゃないんだ。ルクスブルグの仕事ぶりを見に来たのと、勇者紋を一個回収する為、目的は達成したし今日の所はこれで帰らせて貰うよ」
そう言いながらハマドウが杖で、勇者の入っている氷柱を軽く小突いた。
「ルクスブルグの仕事ぶり…じゃあやっぱり、ルクスブルグは魔族達と…!?」
「さてね、ふふふ…」
俺の問いに対し、ハマドウが不敵に笑いながら答えた。
「逃がすか!!魔王権能、爆ぜろ!!」
ディンはそう言って、ハマドウ達を爆殺せんとして、魔王の権能を振り翳す。しかし、
「ふん…」
グランディン(偽)がその魔剣を振るい、ディンの権能の力を両断。爆発の命令は無効化された。
それを見たディンは驚愕し、目を見開いた。
「我にしか扱えぬ魔剣の能力を…貴様、一体!?」
「ふふ、ではまた会おう」
ハマドウはそう言い残し、転移魔術らしき術を起動して、グランディン(偽)と氷付けの勇者と共にその場を去った。
こうして、ルクスブルグ兵と勇者達を全て討ち倒し、アイオーンは解放された。
しかし、俺の今の胸中に、その事を喜べる余裕は無かった。
何故ハマドウが魔王と一緒に居たのか、何故人類の敵となったのか、信じられぬ事ばかりで、思考が上手くまとまらない。
(ハマドウ…何で…?)
その胸中は、その事を何度も問い続けた。




