アイオーン解放戦(3)
「どうする?皆でやっちまうか?」
「ばーか、こんな雑魚俺1人でいいよ。みんなはさっさと中庭へ行ってろ」
勇者達が話し終えると、その中のリーダー格の男だけを残し、他は中庭へ向かった。
その後、リーダー格の男がニヤニヤとこっちを振り向き、腰の剣を引き抜いた。
「なぁ…訊いていいか?」
「あ?」
「お前らが勇者だろ?何でこんな事してるんだ?ルクスブルグに、『それ』で脅されて仕方なくやってんのか?」
俺がそう言うと、リーダー格の男の首に着けられた首を指差した。すると、リーダー格の男はハッと鼻で嗤った。
「命乞いでもすんのかと思ったら下らねぇ…確かにこんなもん着けられてんのは気に入らねえが、俺らはやりたいようにやってるだけだ」
すると、男は突如、剣を振るった。その剣に込められた魔力が斬撃波となり、遠くの間合いにいた俺の頬を浅く斬った。
男はわざと直撃させず、頬を掠める様に攻撃したのだ。それは俺にもすぐ分かった。
「最初ここに来た時は驚いたが、この世界は最高だぜ!チート能力でやりたい放題!金も!女も!なんでも手に入る!」
そう言って男は高笑いを上げた。
(ああ、今分かった。こいつらは…)
力を持たせてはいけなかった者に、力を与えたらどうなるのか、正にその典型そのものだった。
己の欲望のままに力を振るい、他者を傷付ける事に躊躇が無い、悍ましい愚者。
同じ勇者として、凄まじい嫌悪感を感じずにはいられない。そして、かつて平和を願い勇者召喚を行った、ハマドウの思いも汚された様に感じ、無性に苛立たしい。
「分かった…それだけ聞ければ充分だ」
俺はそう言って、剣を構えた。
「ハッ!!雑魚が、勇者の俺に勝てると思ってんのか?」
男はそう言うと、俺に向かって飛び込み、斬り掛かってきた。
そして、男の剣は俺に振り下ろされ、
「…え?」
男の剣は消えていた。俺がすれ違いざまに真上に弾き飛ばしたからだ。男は突然消えたと思ったのか、空っぽの手を見て、呆けていた。
そして、そんな男の呆けている間に俺は、男の首に一刀を叩き込んだ。
男の首が落ち、身体はバタリと倒れる。そこに丁度落ちてきた男の剣が、転がっていた男の頭に突き刺さった。
「…勇者の称号自体に、特に未練も執着も無いが、それでも、お前みたいな人間には名乗られたくないな」
俺はそう言って、剣に付いた男の血を払い飛ばした。
「やっとお出ましか。待ちくたびれたぞ」
中庭で一頻り暴れ、兵士の数も大分減ってきた所に、我を取り囲む様にして数人の人間が現れた。
クウゴに近い歳の人間、クウゴがかつてルクスブルグで着けられたという隷属の首輪、恐らくこの者達が勇者なのだろう。
勇者達が各々の武器を構える。それを見て我は鼻で嗤い、
「良いだろう…来るといい!!せいぜい楽しませろ!!」
そう言い放った。その時だ。
「うわぁぁぁぁっ!!」
突如、勇者共の後方で、巨大な渦が表れた。数名の勇者が斬り刻まれながら、その渦に巻き上げられていく。我はそれを見て、舌打ちを打った。
「クウゴ!!邪魔をするな!!」
「…俺も混ぜろ、今は虫の居所が悪いんだ」
怒りを露わにしたクウゴがそこにいた。




