残された謎(5)
アイオーンの街に侵入後、俺は路地裏に入り、物陰から息を潜めていた。
(騒ぎを起こすつもりは無かったのに、くそっ!!)
物陰から表通りを覗くと、バタバタと何人もの兵士達が行き交っていた。もう暫くは動けなさそうだ。
(にしても、酷い有様だったな…)
ここまで駆け抜けて来て、見えていた街並みについて、俺はそう思った。
闊歩している敵国の兵士、不安を胸に家の中から出てこれない住人、そして、城に堂々と掲げられたルクスブルグの旗。
正に、侵略者に支配された街、敗戦国の末路、アイオーンの惨状を見て、俺はそう連想した。
「いたぞ!!あっちだ!!」
(!! ちいっ、もう見つかったか!!)
俺は腰の剣に手を掛けて、路地裏から飛び出そうとした、その時だった。
外套を着た小さな人影が、表通りを駆けていき、その後を数人の兵士達が追っているのが見えた。
(いたぞって…俺じゃなくてあいつか…?)
そして、その人影は忽ち追いつかれ、兵士に地面へと組み伏せられてしまう。
「このガキ!やっと捕まえたぜ!」
「は、離して…!」
そう言ってジタバタと藻掻く人影。そして、兵士は乱暴にその外套を剥ぎ取った。
「きゃっ…!!」
外套の中から現れたのは、長い髪の若い女性であった。歳は見たところ、俺とそんなに変わらない様に思えた。
「やっと捕まえたぜ、姫さんよぉ、へへへ」
兵士の1人が女性の髪を乱暴に掴み、その顔を無理矢理上げさせた。
「このまま城に連れてく前に…ちょっと俺達と遊んで貰おっかなぁ、ギャハハハ!!」
兵士達が醜悪な表情で、ニヤニヤと嗤っている。
「だ、誰か…!!」
女性が助けを求め、兵士達が女性の衣服に手を掛けようと伸ばしてきた。そして、
「!!? が、があああああ!!!!」
俺はその腕を叩き斬り、斬られた腕は血飛沫を上げながら宙を舞った。
「な、何だてめぇは!!?」
兵士達が全員抜剣し、構える。
俺はそいつらを全員一瞥すると、そのまま勢い良く飛び込み、一呼吸で全員斬り捨てた。兵士達は糸の切れた人形の様にその場に崩れていった。
「貴方は…?」
女性は顔を上げて問い掛けてくる。俺は剣の血を払い、女性の手を取った。
「話は後だ。一旦安全な所へ行こう」
そう言って帰還魔術を起動し、オーキの工房へ跳んだ。
「あ、お帰り…ん?」
工房の机で何かしらの作業をしてたオーキが、俺の帰還に気付いて顔を向けてきた。そして、隣の女性に気付くと、其方に視線を移した。
「この子は?」
「街で兵士に追われてたから助けてきた」
「ヒューッ、さっすが勇者様。格好いいねぇ」
「勇者…!?」
オーキが茶化すように言うと、それを聞いた女性は突然俺の手を振り払い、後ずさる様に距離を取った。
「お、おい…」
「来ないで…!!」
女性はキッと俺を睨みながら、歩み寄ろうとした俺に声を上げた。
「ルクスブルグの勇者…貴方達の所為で、アイオーンが…!!」
「はっ?」
俺は彼女の言葉に耳を疑った。




