残された謎(4)
「ソニア、ちょっと良いか?」
リインの背の上で、俺はソニアに話し掛ける。
「何でしょうか?」
「その…坑道で話してた事なんだけどな…」
躊躇い、言い淀みながら、俺は話し始める。
「100年前、戦い続ける事しかしなかったのは、魔族だけじゃない…俺もだ」
「え…?」
「俺は召喚されてから、ずっと魔族と戦い続けてきた。それが平和への道だと信じて、碌に何も考えずに、その結果が、この今の世界だ…」
「クウゴさん…」
ずっと悩んでいた。再び、この世界に来てからずっと。
平和の為にと戦い続けて、多くの魔族を殺し、そして…魔王を殺した。
その結果、世界の禍根は100年の月日を経ても消えず、今でも世界には多くの血が流れている。
戦いをやめなかった、俺達当事者の責任だ。
「関係あります!!100年前から!!あなた達がそんなんだがら!!戦うことしかしなかったから!!」
あの時のソニアの叫びが、涙が、俺の心には深く刺さっていた。その慟哭が、俺にも向けられてたと思って、胸が痛かった。
だからこうして、吐き出さずにはいられなかった。懺悔にも近い、上手く出来なかった俺の後悔の念を。
言ってどうなるという訳では無い、只の自己満足。それがわかっていても、吐き出さずにはいられなかった。
「本当に済まない…100年前、君の言う通りに俺達が戦いを捨てれていれば、今のこの世界は無かったかも知れない。でも、それが出来なかった。結局俺は、勇者なんて呼ばれても、このざまだ…」
俺の吐き出した後悔を聞いて、アイオーン周辺に着くまで、ソニアは何も言わなかった。
そして、やはり思ってた通り、俺の胸の痛みは消えなかった。
アイオーン周辺の森の中に、リインが着陸する。俺はリインから跳び降りると、労う様にリインの頭を撫でた。
「それじゃあ行ってくる。ソニアは先に帰ってくれ」
「はい…あの、クウゴさん」
「?」
「…いえ、何でもありません。気を付けて下さいね」
ソニアはそう言うとリインに跳び乗り、リインは森から飛び立って拠点へと戻っていった。
(さて…行くか)
俺は外套のフードを深く被り、アイオーン向けて森を駆け抜けた。
暫く走ると、その周辺には無数の破損した武器や鎧の破片などが打ち棄てられていおり、中には腐食が進んだ死体も見られた。間違いなくここで大きな戦闘があったのだと、俺は確信する。
そして森を抜け、アイオーンの城下町の門が見えてきた。
(あれか…)
門の前には、門番として2人の兵士が立っていた。情報通りならあれはルクスブルグの兵士、このまま行っても、入れてはくれなさそうだ。
(さて、どうするか…ん?)
門へと続く道から、1台の馬車が向かってきていた。どうやらこれからアイオーンへと入るつもりの様だ。
俺は御者に気付かれず、馬車の荷台に忍び込み、そこで息を潜ませた。これで中に侵入出来る。
そう思った。
「!! 止まれ!!」
門番がそう言って、馬車を制止した。
(!! ばれたか!?)
俺はそう思い、身構えた。
「はい…あの、何でしょうか?」
御者が門番に尋ねると、門番が近づいてくる。すると、
「がはっ…!?」
その門番が御者の胸に向けて槍を一突き、御者はそのまま御者台から転がり落ち、絶命した。
「悪いな…ここは誰であろうと通すなと命令されている」
そう言って門番は下卑た笑みを浮かべながら、槍についた血を御者の衣服で拭った。
「さーて、中身は何かなぁ~?」
そして、もう一人の門番も馬車の中を物色しようと近づいてきた。
(こいつら…!!)
俺は門番が荷台に上がろうとした、その時、
「な、何だ!?」
俺は馬車の荷台に、炎の魔術で火を付けた。馬車は忽ち、轟々と炎を上げて燃え上がる。
「か、火じっ!?」
火に目が眩んだ隙に、俺は腰の剣を引き抜いてそのまま瞬く間に門番2人の首を刎ねた。
「くそっ…!!」
このままでは他の兵士達が、騒ぎを聞きつけて集まってくる。その前に、俺は街の中へ駆け込んで門を離れた。




