残された謎(3)
「おーっす。おっちゃーん、来たぞー」
行きつけの道具屋に来て、顔見知った店主に向けて声を投げ掛けた。
そうすると、荷卸ししていた店主が、俺に顔を向けてきた。
「ようオーキ。例のヤツ入ってるぜ」
「まじか? じゃあカードの材料と合わせて買っとこうかな」
俺はそう言うと、店主はその例の物と、俺が指示していった材料を商品棚から集め、それらを作業台の上で梱包を始めた。
「そういやお前、最近色々と何かバタバタやってるみたいじゃねえか?」
と、梱包をしながら店主が言ってくる。
「ん?ああ、まあな」
他に気になる道具は無いかとショーウインドウの中を眺めながら、俺は素っ気なく返事する。
「なんか最近、楽しそうだなお前。でも、このご時世だ。気を付けろよ」
「そうだな、気を付けるよ。そういや、今度アイオーンに向かう予定なんだけど、何か変わった話とか訊いてないか?」
俺がそう言うと、店主が顔を上げその手が止まった。
「アイオーンって…お前、知らないのか?」
「え?」
「アイオーン…既に落とされたんだぞ?」
「…はぁっ!?」
店主の言葉に驚き、俺の口から素っ頓狂な声が出た。
「魔族の侵攻か…?」
「いや、それがよ…」
と、店主が言い出し辛そうに言葉を詰まらせる。
「落としたのは…ルクスブルグだ」
俺とディンが拠点に帰還すると、エルーシャ王から聞いた話を、全員に共有する為に、皆を食卓に集めた。
オーキも同様の話を噂で聞いた様で、それらも合わせると、こういう事だ。
俺達がグラナにいる間、ルクスブルグからアイオーンへの侵攻が起こった。
ルクスブルグ側の言い分は、アイオーン王国の魔族との関与と暗躍があり、ルクスブルグ国内に被害が発生したとの事。それの報復としての侵攻だった。
「それが本当なら、ルクスブルグ側の言い分も分からなくも無いな…本当なら」
オーキは食卓の上で、コーヒーの入ったカップを手で揺らしながら言った。
「はっ! 敵を差し置いて同種同士で潰し合うとは、実に愚かだな」
ディンが鼻で嗤いながら言うと、それを見たソニアは無言のまま、ジロリとディンを睨んだ。
「にしても、あの無敵のアイオーン軍を倒すなんてな。ルクスブルグはいつの間にそんな力を付けてたんだ?」
オーキがそう言う通り、アイオーンは五大国でも屈指の武力を誇る国であり、魔族侵攻にもそう簡単に落ちるとは思っていなかった。
俺達がアイオーンを後回しにしたのも、距離的な理由だけでは無くそういう事情もあった。
「…オーキ、今回準備は後どれくらい掛かりそうだ?」
「2日は欲しいな」
俺の問いに対して、オーキは二本指を立てながら答えた。
俺は少し考え込み、それから、こう提案した。
「明日、俺だけでアイオーンに行ってくる。今、分からない事が多すぎる、情報を集めておきたい」
「確かに、それもそうだな。クウゴだけなら帰還魔術ですぐ帰ってこれるし、その間俺は準備を進めておくよ」
「近くまではソニアにリインで送って貰いたいけど、いいか?」
「は、はい」
ソニアが頷いた。
次の日、俺とソニアはアイオーン向けて、リインを飛ばした。




