幻想を晴らすのは(4)
「ディン!!ソニア!!」
ソニアを庇って刺されたディンを見て、俺は叫んだ。
「醜い…実に醜い…」
「どの口が…!!」
囁く亡霊に、俺はキッと睨みつける。
「何を言う…全部貴様等の所為だ…大人しくこの世界で過ごしていれば…こんな争いも、痛みも、これから訪れる死も、何も無かった…全部、貴様等の招いた結果だ…」
「違う…!!」
俺はオーキの肩から手を離し、加勢の為ディン達の方へ駆け出した。
「わっ馬鹿っ!?」
俺の魔力の供給が止まり、縁の歪みが消えていく。オーキの世界の拡張が止まった。
「ぐうっ…!!」
膝を突き、呻き声を上げるオーキの両掌は、焼け焦げて煙を上げていた。莫大な魔力が流れた痕が、オーキの掌に痛々しい程に刻まれていたのだ。
「悪足掻きも終わりだな…」
苦しむオーキを見下ろしながら、亡霊が冷たく言い放った。
「…ふっ」
すると、オーキの顔に小さな笑みが浮かぶ。
「!!」
そして、突如亡霊の姿に異変が表れた。
その姿に、何かノイズの様な物が走り、その像は大きく歪み、乱れていく。
「貴様…何をした…!?」
亡霊が問うと、オーキはそのニヤけた面を上げ、
「種明かしだ」
そう言って指を鳴らすと、オーキの姿が消え、そこには二十枚もの封魔のカードが散らばっていた。
その頃、俺は基点があった坑道に来ており、その基点の目の前にいた。
そして今、俺の役目は終わる。
「これで終いだ」
右腕を前に突き出し、その指先に魔力を込める。
そして、放たれた魔弾が、基点を貫いた。
基点は砕け、その破片は辺りに一面に散らばり、俺の足下にも転がってきた。
(よし、思った通りだ)
何故、物理干渉出来ない筈の基点が破壊出来たのかと言うと、それは、この術の構造上の欠陥にあった。
基点が物理干渉を受け付けないのは、あの亡霊がこの世界に干渉していない時だけだ。現にクウゴの剣は、あの亡霊が姿を見せてない時だけ擦り抜けていた。
つまり、あの亡霊が姿を見せている時は、基点に触れることが出来るという事だ。
俺がそれに気付いたのは、この坑道で亡霊が姿を現した時だ。
物理干渉出来ない筈の基点に、砂埃が薄ら積もっていたのだ。恐らくディンが、亡霊に向けて魔王権能を使った時の魔力解放の余波で吹っ飛んだ砂埃だ。
そしてその砂埃が、亡霊が消えていた時には無くなっていた。物理干渉が出来なくなり、降り積もっていた砂埃が下に落ちたからだ。
その事から、俺はこの欠陥は間違いないと判断した。しかし、俺達がこれに気付いたと亡霊に悟らせると、奴は出て来ないだろう。
だから俺は、亡霊を釣る事にした。
「釣る?」
「ああ、俺達が別の案でこの世界から出ようとしてる風に見せかけて、奴がそれを妨害する。そして、その間に基点を破壊する」
「真意を隠しつつ、それを奴に悟らせずに妨害させるという訳か…じゃあ誰が行く?」
ディンが尋ねると、俺がすぐさま手を挙げた。
「行くのは俺だ、そして…」
俺は封魔のカードを二十枚取り出すと、それを放り投げた。そして、それらに内包された魔力が組み上がり、俺と同じ姿になった。
「オーキさんが、もう一人!?」
分身を見たソニアが驚き、目を丸くした。
「このカード二十枚で作った分身をお前らに付ける。それで別案で脱出しようとしてると思わせる。その間に俺が破壊しに行ってくるから、しっかりやれよ」
そして現在に至る。
分身にクウゴから魔力を得させて世界の拡張をさせ、それを亡霊が止めに介入してくる。
そうして俺は、その亡霊が分身達に目を向けている間に、基点を壊しに来たのであった。
「これでこの世界は、壊れる!!」
そうして、世界は崩壊した。




