幻想の街(4)
「まず、この街について…、この街はグラナだそうだが、実際のとは違う点があった」
「違う点?」
「ここでは炭鉱の街とされているが、実際のグラナの炭鉱業は遙か昔にストップしてる。向こう200年は、稼働してないだろうな」
「それは、何でなんだ?」
「毒ガスが発生したんだとよ。それで稼働出来なくなって、そのまま廃れていっちまったらしい」
それを訊いて、俺は思い出した。この街に引き込まれる直前、俺は坑道らしき洞穴を見つけていた。
確かにあの寂れぶりは、稼働が止まってから数年なんてものではなかった。
そして、あそこに立っていた看板、『毒ガス発生により入るべからず』。成る程、オーキの話と合致していた。
「じゃあ、この街は…」
「恐らく、少なくとも200年は前のグラナをベースにしてるな。どういうつもりで、そんなことしてるのか知らないけど」
(200年…)
俺が最初に異世界に飛ばされるよりも、更に前だ。
「んで、ここからが本題。その200年前のグラナを模した『術』についてだ」
オーキが言うに、この術は術者が予め作っておいた『幻術世界』、今回で言うとこの200年前のグラナの街に引き込むというものらしい。
なので、この幻術世界に術者はいない為、基本的に此方から術者には干渉は出来ない。この手の術で1番有効手である、術者本人を叩くことは出来ないのだ。
「じゃあどうするんだ?」
「術の『基点』、そこを叩く」
俺の問いに対し、オーキが答え、更に続けた。
「この幻術世界を維持する為の基点がどこかに有る筈だ。それを破壊すれば、この幻術世界は維持出来なくなり崩壊し、中の俺達は解放される」
「じゃあその基点の場所を見つければ…」
「そういう事。でも、この街の中を当てもなく探すのは非効率だ。そこで、こう考える」
そう言って、オーキは懐から地図を取り出した。こればグラナ、それも現実世界のグラナの街の地図だ。
「基点の場所は、現実世界のグラナが関係してると睨んでいる」
「というと?」
「術者が、引き込まれた人間の記憶を消したり、役割を与えたり、そういう時とかは術者は世界に干渉する必要がある。でも、それはどこから?」
「成る程、基点からか?」
「正解」
ディンが答えると、そう言ってオーキは指を鳴らした。
「術者がこの世界の管理をする為に、干渉する為の基点が現実にもある。そしてその場所は、この世界と同じ場所でなければならない」
つまりはこうだ。現実世界に基点がある場所に、この幻術世界の基点があると。
「それで、みんなに訊きたい。現実世界からこっちに飛ばされるまでに、何か見つけなかったか?」
(そういえば…)
ここに来る直前、俺は坑道で何かの影らしきものを見つけ、それを追い掛けていたら、いつの間にか此方に来ていた。
俺はその事を、みんなに話した。
「影か…確かに、術と何か関係あるかもしれないな。それで、場所は…?」
「多分、この辺りだ」
俺はそう言って、オーキの地図に坑道の場所を指差した。
「よし、今から行ってみるか」
オーキがそう言うと、俺達は家を出て、坑道に向かった。




