2度目の召喚(2)
「…またかよ」
気が付いた時には、俺は石畳の上に寝そべっていた。
起き上がり、周囲を見渡す。俺が寝そべっていた石畳には円形の魔方陣が書き込まれており、その外周には魔術士であろう人間が数人、俺を取り囲む様に立っていた。
そして、首に何か違和感を感じる。首に触れてみると、鉄製の無骨な首輪の様な物が着けられていた。これは…
「なんだ、随分と若いな」
魔術士の間を割って、豪華な装飾のあしらわれた冠やマントを身に付けた、壮年の男が俺の前へ歩み寄ってくる。
「よくぞ参られた、異世界の勇者よ」
俺に向かって男は話しかける。そして、こう続けた。
「私は、このルクスブルグ王国の国王、勇者召喚の儀により其方を召喚した」
(ルクスブルグ…?セレニア王国じゃないのか?)
ルクスブルグという国は聞き覚えがある、前に召喚されたセレニア王国とはかなり離れた国だ。少なくとも、これで前に召喚された世界と同じ世界であることは間違いないようだ。
「其方を喚んだ理由は他でもない、かつて異世界の勇者により討伐された…、魔王グランディンが復活したからだ」
(っ!?…グランディン!!)
魔王グランディン。かつて、魔族を率いていた最強の魔族の名だ。
かつて俺が殺し、俺が殺された相手。それが復活したという事実を訊かされ内心驚愕する。
ふと、最後の闘いでのグランディンの死に際を思い出す。
「このままでは、終わらん…。我にとって…死は…終わりでは…無い…!…貴様は、どう…かな…?ふふふ」
(そうか、あれはそういう事だったのか…)
どうやらあの時、何かしらの方法で、死んでも復活する算段があったようだ。そして、俺の死後に復活し、再び魔族を率いて世界侵攻に乗り出すつもりでいたようだ。今の様に。
「このままでは、世界が危ない。其方には魔王を討滅し、世界を救って欲しいのだ」
事情はわかった。こっちとしても、かつての宿敵を野放しにする気はない。だが、その前に色々と訊きたい事がある。
「えと…」
俺が口を開くと、突如、首輪が輝き全身に電流でも流れた様に激しい痺れが走った。
「があああああっ!!!?」
不意の痛みにより、俺はその場に倒れてのたうち回る。
「因みに其方には拒否権は無い」
俺に着けられていた首輪は、只の首輪では無かった。
恐らく、脱走や反逆防止の為の、隷属の魔術が込められている。俺が例えこの世界のどこに居ても、居場所は特定されるし、意に添わない言動があれば今の様に痛みによる躾が行われる。
このクソ王は、最初から勇者を飼い慣らすつもりだったようだ。
痛みに悶える俺を一瞥すると、国王は話を続ける。
「かつて、100年前に其方と同じように召喚されたという勇者クウゴは、召喚の儀により得た加護の力により、多くの魔族を討ち倒してきたという。其方にも、同様の戦果を期待している。そして…」
国王が右手を挙げると、周囲にいた魔術士達が魔方陣に魔力を込める。すると、魔方陣が輝き出す。
「この転移の魔方陣は、この国の東の森のど真ん中に跳ぶように設定している。そこで其方の力を試させてもらう」
話の中に、聞き捨てならない情報があった。100年前、俺が、何だと?
「おい!ちょっと待て!話を…」
「魔物の巣くう森を抜け、見事この城に戻ってきてみせよ」
そこで、俺の視界が光に包まれ、俺は跳ばされた。




