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幻想の街(1)

リインに乗りグラナへと向かう途中、俺はある物に目が止まり、ソニアの肩を叩いた。


「ソニア、止まって。あそこに何かある」


俺は言うと、ソニアはリインに指示して制止させる。一同は俺が指を差した方へと視線を向けた。


「あれは…魔族の拠点か?」


恐らくグラナへと侵攻しようとしていた魔族の軍の拠点だろうか。視線の先には野営地らしき物がそこにあった。


しかし妙だった。その拠点に見張りが居なかった。それどころか、魔族の気配自体感じない。


「行ってみよう。ソニア」


「はい」


ソニアが返事を返すと、リインは拠点へと近づいた。しかし、既にすぐ真上に来てるというのに、拠点の中のテントからは誰も出てくる気配が無く、拠点の中は本当に空っぽの様であった。


「…どういう事でしょうか?」


ソニアが俺に疑問を投げ掛ける。オーキとディンは何か考えたいるのか、ただ、無人の拠点をじっと見ていた。


「わからない…兎に角、グラナへ急ごう」


俺はそう言うと、ソニアはリインの速度を上げさせ、グラナへ向かった。





グラナ王国へ着き、城門前に降り立つ。思った通り、そこには見張りの兵は居なかった。


そのまま俺達は城門を潜る。この広い城下の街には、人の気配がまるで感じられない。エルーシャ王の話の通り、街の中は全くの無人となっていた。


「ホントに誰もいない…どこ行ったんでしょうか?」


隣にいたソニアが、キョロキョロと街を見回しながら呟く。


襲撃した魔族に攫われた線も考えていたが、恐らくそれも無さそうに思えた。街中はそういった争った様な形跡がまるで見られず、綺麗なまま。


人だけが、そこから姿を消していたのだ。


「手分けして、何か妙な物が無いか探そう」


そう言うと、俺達は数刻後に城門に集まる約束をしてから、街中を散った。


俺は別れた後、城下の街道を駆け上がり城へ向かった。駆けながら周囲を見回すが、そこにはやはり何の気配も感じない。


その時だった。


「!!」


一瞬、微弱ではあるが、何か妙な魔力の流れを感じた。俺は脚を止め、感知するために精神を集中した。


(あそこか…!!)


街道を逸れて路地裏へと潜り込む。魔力の痕跡を辿り、そこへ向かう。


すると俺は、街の外れにある岩壁に空いた洞穴の前に辿り着いた。


洞穴の足下には、あちこち苔むしていて長年使われてないと見られるレールらしき物がそこにあり、穴の傍に廃土運搬用のトロッコがボロボロの状態で打ち捨てられてあった。恐らくここは、坑道だったのだろう。


坑道の傍に看板が立っているのを見つける。『毒ガス発生により入るべからず』と書かれている。


「!! 誰だ!!」


俺は声を上げた。今、穴の中に誰かいた。その影を見つけた俺は、影に向かって言ったのだ。


影は穴の奥へと消えていき、俺はそれを追従して穴の中へと向かう。


「待て!!」


影を追って穴の中を進んでいると、その時、


俺に、ある異変が起きた。


「!! な、なんだ…!?」


突如、急に視界が歪み、俺はその場に立っていられなくなって、膝をつく。そこで、俺は看板に書いてあった事を思い出す。


(まさか…毒ガス…!?)


俺の視界は暗転し、そこで意識は途切れた。





「それじゃ、行ってくるよ」


俺はそう言うと、妻が笑顔で見送ってくれた。


家を出ると、俺は仕事道具であるツルハシを担いで、職場である炭坑へと向かった。


職場への道中、俺は仲良さそうに談笑していた魔族と人間のカップルに目が止まった。


花屋らしき店の店頭で、その二人は楽しそうに花を選んでいた。


その微笑ましい光景を見て、俺は思わず笑みを溢した。


(仕事帰りに、俺も奥さんになんか買って帰るか…)


そう思って、俺は職場へと脚を進めた。


ここはグラナ。人間と魔族が共存する、炭鉱の街だ。

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