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帰還(5)

「お、目ぇ覚めたみたいだぞ」


オーキがそう言うと、俺達は椅子に座らせたグランディンの傍に集まったり。


気絶したグランディンを取り敢えず回収し、オーキの魔術工房に運び込んでいた。あそこに放置する訳にもいかないし、何より訊きたい事が色々ある。


もちろん、そのままでは危険な為、対策はとらせて貰った。


「貴様ら…こんな事して只で済むと思うなよ…!!」


憎悪をこちらに向けるグランディン。その手足は縄で縛られて椅子に括られており、その首には無骨な首輪が巻かれていた。


この首輪は、俺がかつてルクスブルグで着けられた事のある隷属の首輪の亜種みたいなもので、オーキが造った特別製だ。


あの時の首輪は、痛みを与えて対象の意思を押さえつけるものであったが、この首輪はと言うと、


「こんなもの、この我が抜け出せないと…あれ?」


容易く千切れると思っていた縄が切れない。グランディンはいつもの力が出せないでいた。


これがこの首輪の性能である。着けられた者の力を制限する、抑制の効果が秘められている。


首輪に設定された主の許可が無ければ、その力は大きく制限される。因みにその主は俺に設定してある。主の魔力が封印の強度に反映されるので、俺が適任だった。


「さて、抵抗は無駄だとわかって貰えたと思うから、始めようか…」


オーキがそう言うと、俺はグランディンの前に出る。これから、グランディンに尋問を行うのだ。


「まず質問したいのは、お前はついさっき目覚めたって言ってたけど、それは間違いないか?」


「ちっ…ああそうだ、我はさっき目が覚めた。」


「じゃあ、3ヶ月前のセレニア滅亡については、全く知らないんだな?」


「知らん。我が真っ先に滅ぼすつもりで、折角あそこで復活する様にしておいたというのに、既に滅んでいるとはな…」


忌々し気にグランディンが話す。


(まじかよ…)


何ということだ。3ヶ月前に復活し、今この世界を侵攻しているという魔族の長グランディンは、偽物だったのだ。


「なあクウゴ…本当にこの女がグランディンなのか?」


グランディンの姿を怪訝そうに見て、オーキが俺に問う。


「ああ、それは間違いない」


「まさかグランディンが女とはな…それも、だいぶアホそうな…」


「なんだと小童ぁ!?」


椅子をガタガタと揺らしながらグランディンが吼える。


オーキの話によると、グランディンの性別が女であるという事は、後世には全く知られていないとの事。当事者である俺にとっては当たり前の共通認識であった為、少し驚いた。


確かに、名前もどこか男性的だし、後世の人間が男だと勘違いするのもわかる気がする。100年も前に倒された魔王の事など、どこか曖昧に伝わっている点があっても、なんら不思議ではない。


「次の質問…、100年前に俺が確かに殺した筈だ、どうやって復活出来たんだ?」


「話す義理は無いが…まぁいい答えてやろう。

100年前、あの最終決戦に臨む前、私はある保険を掛けていたんだ」


グランディン曰く、こういう事だ。


俺が旅の中で成長していき、四魔将を討ち取る程までになってきたのを見て、彼女はこう思った。


万が一が、あると。


当初は大して気にも止めていなかった存在が、今や無視できない危険な存在へと成り果てている。だから、もしもの時の為の保険を掛けておく事を決めたのだ。


決戦前、このセレニア領の隅にある街の近く、あの洞窟に、グランディンは自身の力の1/10を封印しておいたのだ。復活を100年後に設定し、俺がいなくなったこの世界で、再び復活出来るように。


そして決戦で俺に討たれ、グランディンはその目論見通り今、復活したという訳だ。


「ええダッサ…クウゴに負けるかもって思ってたって事じゃん、みみっちい保険まで残して。こんなんがあの魔王とかショックなんですけど~」


煽るように囁くオーキ。それを聞いてグランディンが激昂し喚きだした。


「そこの小僧聞こえてるぞ!!よーし殺す、絶対殺す!!今殺す!!」


「やれるもんならやってみろよ1/10グランディンさんよぉ!!」


目の前で繰り広げられる、頭が痛くなるような応酬に、俺は唖然とした。


(グランディンって、こんな奴だったか…?)


オーキのしょうもない煽りに乗り、青筋立ててがなり立てているこの女を見て、こいつがあのグランディンであるのかが、なんだか不安になってきた。


そんな事を考えた後、俺は後ろの方に立っていたソニアが、ジッとグランディンの事を見ているのに気付いた。


どこか複雑な心境を思わせる表情でグランディンを睨みつけていた。無理も無い、自身の故郷を滅ぼした魔族の親玉だと思うと、実際その心境は複雑だろう。


気が付けば、もう日は沈んでいた。尋問は一旦終了し、俺達は休む事にした。

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