帰還(3)
やがて俺達は、森の奥にある洞窟がある場所まで辿り着いた。
そして、その洞窟の前には、
「GULLLUUU…!!!」
これまで遭遇したどの魔物よりも、巨大な魔物が唸り声を上げていた。大きな魔力の反応はその洞窟の中であり、洞窟の前にいるあの魔物を退けないと先には進めない。
俺はその魔物を仕留めようと、前に出ようとする。が、それより先に、ソニアが前に出た。
「ここは私にやらせて下さい」
「そ、ソニア…?」
「エルーシャの時は私、殆ど何も出来ませんでしたけど…、私だって、戦えるんです!!」
そう言って、ソニアは自分の背後に手を回し、
「じゃーん!!」
衣服にしまっていたと思しき、槍の穂先と五本に分かれた柄を取り出して見せた。それらは瞬く間に連結し、一本の槍となる。
「オーキさんに造って貰いました!名付けて、『分離槍』!!」
「いつの間にそんな物…」
「私だって、クウゴさんの役に立ちたい…だから、私も戦えることを、今証明します!!この為に付いて来たんです!!」
ソニアの肩からリインが離れ、元のサイズに戻る。そして、その背中に跨がったソニアは槍を構えて魔物へと向いた。
彼女のここまでの意思を見せられて、それに水を差すのは野暮ってものだろう。俺は手に持った石の剣を消した。
「わかった、そいつは君に任せよう」
そう言って、俺は彼女の戦いぶりを見守る事にした。
「行くよ、リイン!!」
ソニアの号令によりリインが魔物へ向かう。リインは魔物に向けて炎弾を放った。
魔物がその炎弾を躱し、爪を振り下ろさんとリインに跳び込む。そしてそれをリインが躱し、
「やっ!!」
そのすれ違いざまにソニアが槍の刺突を繰り出した。通常の槍では届かない間合い、しかし、ソニアの槍は刺突の瞬間分離し、本来の間合いの外にいた魔物の身体を深々と穿った。
「おおっ!!」
成る程、オーキは良い武器を造ったと、俺は感心した。
あの分離槍という槍、どうやら使い手の魔力で連結するという仕組みの様で、自在に連結・分離が可能らしい。なのでああして刺突の瞬間に分離する事で、思わぬ間合いから攻撃出来るのだ。
ソニアの様な竜操手は主に竜に騎乗して戦う為、その得物は騎乗しながらでも敵に届く、槍等の長物が一般的だ。そういう意味では、ソニアにはぴったりの武器であると言える。
「GAAAAAA!!!!」
しかし哀しいかな、ソニアが繰り出した刺突は、僅かに魔物を怯ませる程度であり、致命傷には至らなかった。攻撃は届いても、非力なソニアでは命までには届かなかったのだ。
しかし、その怯んだ隙をソニアは逃さなかった。
「ライズ、『竜爪』!!」
ソニアが叫ぶと、リインが振りかぶっていた右腕の爪が輝き出した。
その輝く爪が、魔物に向けて振り下ろされる。その一撃は、魔物の肉を破砕し、その命をも砕いた。以前にセレニアにて、俺が剣で受けた時よりも遥かに強力な一撃だった。
あれが竜操手の技能である、ライズ。自身の魔力によって、相棒の竜を強化する事が出来るのだ。
俺は見事と言わんばかりに、ソニアに向けて拍手を送ると、ソニアは誇らしげに笑みを浮かべ、右手でサムズアップをしてみせた。




