エルーシャ防衛戦(3)
否命剣のイエグロス。前の旅の時、一番初めに遭遇した四魔将だった。
最初に遭遇した時、まだ戦闘にもあまり慣れてなかった事もあってか、その力に手も足も出ず、命からがら敗走する他無かった。
その時の悔しさは、今でも忘れない。
その後、俺は旅の中で力をつけていき、そのイエグロスとも渡り合える様になっていった。
しかし、そのイエグロスとの決着をつける機会は訪れなかった。
イエグロス以外の他の四魔将を討ち取り、その後最後の戦いが始まり、魔王グランディンと相討ちになり、死んだ。
結局イエグロスとは戦う事無く、俺は元の世界に帰還したのだった。
「100年ぶりか…嵐の様な剣技を使う剣士が現れたと聞いてもしやと思ったが、やはり貴様であったか小僧…いや、勇者クウゴ」
「勇者クウゴ…!?では、コイツが…!?」
そう言って、隣にいた魔族の兵士が剣を構え、向かってこようとする。が、イエグロスは兵士の前に右手を伸ばして制止した。
「拠点に残る全兵士に通達せよ。全員、エルーシャ制圧に行けとな」
「しかし…」
「俺が行けと言ってるんだ…早く行け」
イエグロスが兵士を睨みつけると、兵士はすぐにテントを出て行った。
「…自分一人で充分って事か?随分舐められたもんだな」
「貴様とは、サシで闘いたかったからな…さあ、構えろ小僧」
イエグロスが腰の剣を抜き、構える。醸し出される空気に、射抜かれる様な殺気が籠もる。
「『あの方』を打ち破った力、俺に見せてみろ」
「いいだろう…行くぞ!!」
俺は剣を構え、地面を蹴った。
剣に魔力を込め、イエグロス向けて叩き込む。対して、イエグロスもその剛剣を俺に向けて繰り出し、互いの斬撃が衝突した。
斬撃の衝撃により互いの刃が弾かれ、その都度俺達は再び斬り掛かる。
そうして、幾度となくぶつかり合う互いの剣、鋼の嵐の如き剣戟が、俺達の間に吹き荒れた。
否命剣のイエグロス。その異名の通り、奴の剣は対峙するあらゆる命を否定する。
その魔力を帯びた剛剣の一撃は、四魔将屈指の破壊力を誇り、その一撃全てが命を刈り取る絶技となる。
こうして剣を打ち合わせ、その異名の意味を改めて思い知る。少しでも気を抜けば、俺の命はその剣に、容易く否定されるだろう。
だから、俺は狙う。奴を崩せるタイミングを。
「ヴォルテック・エア!!」
横回転と共に一刀を繰り出す。イエグロスはそれを真後ろに飛び身を躱し、発生した渦からも免れる。
その攻撃の後、俺が大振りに振るった後のこのタイミングを、イエグロスは逃さなかった。
「甘い!!」
振り下ろされるイエグロスの剛剣が俺に迫る。
しかし、狙い通りだ。
「!!」
俺の左手に握られた剣が、イエグロスの左肩に突き刺さる。
ヴォルテック・エアは、イエグロスの隙を作るためのおとりだった。
ヴォルテック・エアで振り抜いた右手を、勢いそのままで背後に回し、その時に流れるように剣を左手に持ち替えたのだ。
大振りに振り抜き、隙が出来たと思い仕掛けてきたイエグロスの、隙を突く為に。
「つか…まえたぁっ!!」
俺はそのままイエグロスの刺さった剣を振り下ろし、床に叩きつける。
「がはっ…!!」
叩きつけられたイエグロスが吐血し、その衝撃で剣が引き抜け、イエグロスの身体が吹っ飛ぶ。俺はすぐさま剣を構え直し、魔力を込め、
「おおおおおおっ!!!」
渾身の一刀、ディバイド・エアを叩き込んだ。




