エルーシャ防衛戦(2)
「…それじゃ、行くぞ。ソニア、飛んでくれ」
俺が言うとソニアは頷き、俺達を乗せたリインは飛び立った。
俺達の作戦はこうだ。
戦力的にもう後が無いエルーシャが、この侵攻を止める唯一の方法。それは、敵将を討つ事だ。
魔族と言えど、その群れを率いて指揮する敵将が居る筈。そして、その敵将が構えている拠点がある筈だ。
俺が拠点に乗り込み、敵将を討つ。
そしてそれまでの間、オーキとソニアがエルーシャに戻り防衛する。
俺が単独で乗り込む事にソニアは猛反対したが、余裕が無いエルーシャの防衛には二人の協力が必要だと、半ば無理矢理言い聞かせた。
「見えた…!あそこだ!」
拠点にらしき野営地を見つける。俺は腰の剣を引き抜いた。
「いいか二人共、やばくなったらすぐに逃げろよ」
俺はそう言うと、オーキが小さく笑う。
「それはお前もだろ…死ぬなよ」
「…クウゴさん」
心配そうに俺を見るソニアに、俺は安心させるように微笑む。
「大丈夫、俺は死なないよ…じゃ、行ってくる」
そう言って、リインの背から飛び降り、拠点に向かって飛び込んだ。
「て、敵襲!!」
俺は着地して間髪入れずに、見張りの兵士達を斬り倒し、拠点のテントの中に入っていった。
そして、そこに居たのは…
「!! お前は…!!」
「ほぉ…、懐かしい顔だな。少し、背が伸びたか…?」
かつて、魔王グランディンの僕の中で、特に強大な力を持っていた四人の魔族がいた。
それが四魔将、前の旅でも、幾度となく闘った相手。
その中の一角である、否命剣のイエグロス。その男が、俺の前にいた。
クウゴを拠点に下ろし、俺達がエルーシャに帰り着いた頃、既に戦闘は始まっていた。
俺達の見立ての通り、エルーシャ軍側は劣勢に立たされていた。
「ソニア!高度を下げろ!」
俺が言うと、ソニアがリインの高度を下げさせる。
俺はカードを取り出して、中の魔力を解き放つ。そして、魔族の軍勢に向けて、魔弾を連射した。
魔弾に射抜かれた魔族達が、次々に倒れていく。しかし、それ以上に多く、魔族達が攻めてくる。
(ちっ…、キリがねえ!!)
押し寄せる魔族達に、内心辟易する。
そして、そんな時だった。
「!!」
空中にいた筈の俺の眼前に、炎が迫った。魔族が撃った魔術の炎弾だ。
俺はそれを避けようと身を躱す。しかし、バランスを崩してしまい、
(げ、まずい…!!)
俺はリインの背中から落下した。
「オーキさん!!」
ソニアが叫ぶ。宙に投げ出された俺の身体が地面へと向かっていく。
そして、その先には、槍を立てて待ち構えていた魔族達がいた。
そのまま俺の身体は、その槍で串刺しに、
「ならないんだなぁ、これが~」
俺はカードを数枚取り出して、その中の魔力を一気に解放する。そして、『空』を蹴った。
「よっ、ほっ、はっ、と」
空中に、見えない足場でもあるかの様に、俺は宙を駆け、そのまま魔弾をばら撒く。下に居た魔族達が次々に射殺される。
空道、空気を固めて足場を作る魔術だ。カードの消費は多いからあまり使いたくは無かった。
俺はそのまま空を歩き、リインの背中に戻ってきた。
「ただいまー」
「よ、良かった…」
俺を見て、ソニアが安堵したように深く息をついた。
「心配かけて悪かったな。じゃあ、行くぞ!!」
「はいっ!!」
そうして俺達は、再び魔弾をばら撒きながら、戦場の上を駆け抜けた。




