これからの事(5)
俺達が戦場に介入し数刻、魔族の軍勢達が旗色は変わらないと見たのか、撤退を始めた。
(退いたか…)
俺は深く息をつくと、剣を濡らす魔族の血を払い、鞘に収めた。
「…」
俺は戦場を見回す。魔族の手に掛かり、殺された兵士達の死体が、辺りに転がっていた。
魔族に死体は残らない。絶命すると、その肉体はどういう訳か、黒い霧となって消え失せる。
だから、戦いの後に残るのはいつだって、人の死体だけなのだ。
前の旅でも何度も見た光景。しかし、俺はそれを見て、その胸中にあの時と違う物を感じていた。
人間と違い、魔族は死体も残らない。何も残せない。
俺はそれが、何だか酷く、哀れに思えた。
「クウゴさん!」
リインが俺の傍に降り立つと、そこから飛び降りたソニアはすぐさま俺に駆け寄ってきた。
「ソニア、怪我はしなかったか?」
「はい!クウゴさんは、大丈夫ですか…?」
「俺は大丈夫だ、傷一つ無いよ」
「そう…良かった…」
ソニアは安堵した様に深く息をついた。
「よう、お疲れさん…大活躍…だったな…」
ソニアの後から歩いてきたオーキが、労いの言葉を投げ掛ける。が、その顔色は何だかあまり良くない様に見える。
「…大丈夫か?」
「ちょっと頑張り過ぎた…カード節約するために、俺自身の魔力もちょっと使ったからな…」
オーキの事情は、昨日少し聞いていたから知っている。魔臓が常人の1/2しか機能しないとの事だが、実に難儀な話だ。
某RPGで言うところ、オーキは強い術を覚えてても、MPが足りなくて碌に使えないベビーサタンみたいなもの。
オーキが勇者紋をあれだけ求めていたのも頷ける。自身の欠点を一気に解消しうる特効薬と言えるからだ。
「そこの者達、ちょっと良いか…?」
俺達へ向けて、一人の兵士が話し掛けてきた。俺達はその兵士に振り返る。
その男は、年齢は三十前後位のがっしりとした体格の男で、腰には煌びやかな装飾が施された剣を差していた。
「此度の加勢、誠に感謝する…私は、エルーシャ王国騎士団長のギデオン…貴殿らは、一体…?」
「俺はクウゴ…、勇者召喚の儀により召喚された勇者です」
「な、何と!?」
俺が答えると、ギデオンと名乗った男が驚愕する。
「エルーシャの王と謁見したい…お願いです、案内して下さい」
こうして俺達は、エルーシャ王と謁見する事になった。




