未来へ向けて(5)
それから三日後、遂に俺が元の世界に帰る時が来た。
俺は帰還魔術を使用して、ソニアの墓のある場所に来た。
「魔方陣、作っといて良かった」
「まあ屋外に設置したから、その内風化するだろうけどな」
「…済まない、大変だろうけど、俺が帰ってからも偶に来てやってくれ…俺はもう、来る事は無いだろうから」
「わかってるよ。任せとけ」
そして、俺はソニアの墓の前に来て屈む。あれからオーキが墓石を作り直し、以前の簡易的な物よりもかなり立派な物になっていた。
「ソニア…俺、いよいよ元の世界に帰るよ」
そこまで言うと、俺は一度沈黙する。そして、続けた。
「君を死なせてしまって、俺は苦しんだ。大切な人が傷付いていくのを見るのが、ましてや死ぬ事がこんなに辛く、痛いなんて、俺は知らなかった。
そして、そんな痛みを君に与え続けてたんだと知って、俺は自分の愚かさを兎に角責めたよ。
だから俺は…決めたんだ。もう誰にもこの痛みを味わって欲しくないし、痛みに苦しんでる人を救ってあげたい、そういう痛みに寄り添える人間に、これからなっていきたいって…
だから、俺はこの痛みと共に生きていく。痛みを生まない為にも、痛みを癒やす為にも…こんな生き方、君はまた怒るかもしれないけど、ごめん…俺はこんな生き方しか出来ないみたいだ」
俺はそう言って苦笑した。そして、更に続けた。
「向こうの世界では俺は勇者では無くなる。出来る事は更に限られて来ると思う…それでも、自分に出来る事を精一杯頑張ってみたいと思う」
俺はその場から立ち上がり、最後にこう告げた。
「それじゃあもう行くよ。さよなら、ソニア…いつの日か、優しい世界でまた会おう…」
俺は踵を返し、魔方陣の上にいるオーキの側に来た。
「…行くか」
「…ああ」
そして、帰還魔術を起動して、俺達は跳んだ。
セレスワイズ邸庭園にて、勇者帰還の儀の魔方陣の周りには多くの人間が集まっていた。
エルーシャ王、ギデオン騎士団長、リタ王女、グラナ王、セレスワイズ夫妻、イストンの里の面々、俺達に関わりのある人間達が、俺の帰還を見送りに来てくれていたのだ。
「それじゃあ、これを」
俺は腰に下げていたイリスを、オーキに手渡した。
「今までありがとうイリス、君にもパパにも世話になったな」
そう言って手渡したイリスの柄を、最後に一撫でした。
「パパ呼びやめい」
俺の言葉にオーキがツッコむ。その後、俺達二人は小さく吹き出した。
「…じゃあ、始めるぞ」
「…ああ」
オーキが魔方陣の外に出ると、地面に手をついて魔力を魔方陣に流した。
そして、突如俺の身体が浮遊感に包まれ浮き上がった。いよいよ、帰る時が来たのだ。
「じゃあな泣き虫勇者!! 俺らの事忘れんなよ!!」
オーキはそう言いながら、涙を流しながら手を振った。
「忘れられるかよバカ野郎!! 元気でな!!」
俺もそう言って、同じく手を振り返した。
「クウゴ君!! 達者でな!!」
「クウゴ殿!! お元気でー!!」
「クウゴ!! ありがとう!!」
他の面々も各々言葉を投げ掛けながら、俺に向けて手を振っている。
(さよなら…皆)
そして、俺は元の世界に、帰還した。




