エピローグ『喚ばれた世界はもう100年後』
筈だった。
「よう」
気が付くと、俺はオーキの工房の床で座りこんでおり、何故か目の前にはディンが居た。
「……」
「なんだその顔は、そこは久しぶりの再会に感涙する所であろうが」
ディンは俺の顔を見るなり、何か言ってきた。
「……そりゃ、今、正に帰るとこだったのに、また喚び戻されればそんな顔にもなるだろうよ……」
俺はあの時、確かに元の世界に帰還したのだ。
しかし、俺が元の世界の地に降り立った直後、
「!!?」
俺の足が、地に沈み込んだ。この感覚は知っている、何せこれで三度目だから。
行羽空吾、三度目の異世界転移だ。
そして今に至る。
「お前が居るって事は、まさか……」
「そうだ。我はあの決戦から100年の時を経て、再び蘇ったのだ」
つまり目の前のコイツは、再び1/10グランディンという訳だ。
しかし、向こうの世界の一瞬でこっちでは100年経過してるとは、相変わらずその時の流れの差は謎である。
「それで、何で俺は喚ばれたんだ? まさか、また世界の危機が……!!?」
「いや、違うぞ」
「は?」
「爺さんの遺言っすよ」
誰かの声が聞こえた。俺が声の方へ振り向くと、そこには、
「オーキ!!」
「……そんなに似てるっすか? 俺と爺さん」
俺がオーキだと思っていた少年はそう言って苦笑した。
「奴の孫だ。そっくりだろう? 我も最初見た時驚いた」
「オーキの……孫?」
その事実に狼狽えながら、俺はその少年を凝視した。確かにオーキそっくりであったが、良く見ると違った。
「俺はパーズ、パーズ・セレスワイズっす。爺さんの遺言に従って、アンタを召喚しました」
「遺言……」
それを聞いて、俺は少し胸が痛んだ。当然あの時から100年も経過してればそうなるのはわかる。それでも、嘗ての仲間の死を実感させられると、やはり心に来る物かあった。
「爺さんの遺言はこうです『100年後の世界をアイツにも見せてやりたい』と。生前この為に、各国と掛け合って勇者召喚の儀の許可を進言してたみたいっすね。そしてこうして俺が喚び出したって訳っす」
「オーキ……」
「そう言う事だ……では、早く立てクウゴ。どうやらこの世界も100年経って少しはマシになった様だ。早速見に行くぞ」
ディンはそう言って、右手を差し出した。
「……ああ、そうだな」
俺はその手を取り、立ち上がった。
工房を出て、拠点の街を出る。そして、ディンがこう言ってきた。
「そう言えば、さっき聞いたのだがセレニアが復興したらしいぞ?」
「セレニアが!?」
「何でも、戦後セレニア王族の生き残りが復興させたらしい。貴様の嘗ての拠点の国だろう? 行ってみないか?」
「ああ!! 行こう!!」
「セレニアっすか……ここからだと結構距離ありますよ?」
「……こんな時、ソニアとリインが居てくれればな。我も今は幻召魔身は使えん」
「……良いさ。今回は急ぐ旅じゃないからな、ゆっくり行こう」
「……そうだな」
俺は笑みを浮かべて言うと、ディンも笑って返した。
「あ、そうだ。クウゴさんに渡しておく物があったんだった」
パーズはそう言って、俺にある物を手渡した。
「こっちにいる間は貸しといてやれって。ちゃんと手入れ済みっす」
「そうか……ありがとうパーズ」
俺はパーズから渡された剣、イリスを腰に下げた。
「さあ、行こうか」
俺達は歩き出した。俺達が掴んだ未来を見に。
これで、『喚ばれた世界は100年後 2度目の異世界冒険譚』は終了となります。如何だったでしょうか?
初めての連載作品として、兎に角完結させる事を重点的において1カ月ちょっと駆け抜けてきましたが、ここまで書き切る事が出来て、本当に良かったです。
日々少しずつ増えていくpv数はとても執筆の励みになりました。皆さん、本当に今まで読んで頂きありがとうございました。
それでは、また違う作品でお会いしましょう。
シニフダ




