未来へ向けて(3)
「ぐ…くそっ…」
気が付くと、俺は地面に伏せていた。
奴に貫かれた傷は、どういう訳か塞がっていた。しかし、
(魔臓鎧が、破壊されたか…)
あの時胸を貫かれた時に、魔臓鎧は破壊され、その機能を失っていた。ハマドウとの戦いから連戦でカードも碌に残っておらず、俺自身の魔臓ももう限界だった。
今の俺には、出来る事が碌に無かった。
「パパ…パパ…!!」
その時、どこからか声が聞こえた。
(この声…イリス!!?)
「パパ…私に…炎を…!!」
イリスの呼び掛けにより、その意図を俺は理解した。そして、俺は最後の力を振り絞り、魔力を錬った。
「クウゴぉ!! イリスを、鞘に…!!」
俺が叫ぶと、クウゴは此方を見ずに俺の意図を察したのか、イリスを鞘に収めた。
そして、俺はクウゴの鞘に、白炎を込めた。
オーキの声を聞き、俺はイリスを言う通り鞘に収めた。
そして、オーキは俺の鞘に白炎を込めた。俺はイリスを引き抜くと、イリスに異変が生じた。
その刀身からは白炎が立ち上っていた。聖なる炎が宿されたのだ。
俺はそれを、アント・エアゴ向けて振り抜いた。
「おおおおおおおお!!!!」
「くそっ…!!」
躱そうとしていたアント・エアゴであったが、意識を取り戻したフリクトの所為で明らかに動きが鈍っており、その一刀をまともに受けてしまった。
「ぐおおおおおおっ!!!!!」
俺が斬った場所から白炎が燃え上がり、アント・エアゴはその苦痛に悶える。そして俺は続けて、二閃、三閃と繰り返していき、アント・エアゴの身体を刻んでいった。
「ぐぅっ…くそがぁ!!!」
次々に身体が白炎の刃に削られていき、堪らなくなったアント・エアゴは大きく後ろに跳び退いた。
「滅界七星…!!」
ディンの声が聞こえた。すると、そのディンの頭上には『七つ』の『星』が瞬いていた。
「今までの、只壊すだけの我では行き着けなかった…この力は『守る』為の力だ!!」
ディンが掲げた魔剣の刀身に、頭上の『星』達の破壊エネルギーが集束していく。そして、全てのエネルギーが刀身へ行くと、星々は霧散する様に消えていった。
「守る為、倒すべき敵のみ倒す力…『滅界七星・新星』だ!!!」
その破壊エネルギーが込められた刀身を、俺から逃げる様に離れるアント・エアゴ向けて振り下ろした。
「貴様が弄んできた生命達の痛みを知れ!!! 魔王墜剣!!」
七星の破壊エネルギーも上乗せされた光の剣が、アント・エアゴに叩き込まれた。世界をも滅ぼせる程の破壊エネルギーをその身に浴びた身体は、引き裂かれ、砕かれ、そして、更に焼かれていった。
「ぐああああああああ!!!!!」
俺はそんなアント・エアゴに向かって飛び込み、そして、
「終わりだ…アント・エアゴ!!」
最後の技を、繰り出した。
「白導・炎渦竜王!!!!」
白炎を宿した斬撃の大渦が、アント・エアゴを飲み込み、その身を斬り刻みながら焼いていった。
「馬鹿なぁぁぁぁぁぁ!!!!!?」
炎の渦は荒れ狂い、その中でアント・エアゴも悶え苦しみ、のたうつ。そして、
炎の渦が消えると、アント・エアゴの身体は何も残さず燃え尽きたのだった。
「お…終わった…」
俺はそれを確認すると、大きく溜息をついた。そして、再びアント・エアゴが燃え尽きた場所を睨みつけた。
「フリクト…」
その身を犠牲に、動きを縛ってくれたフリクトに思いを馳せ、俺はその名を呟いた。
しかし、
「!!?」
突然、この場所『世界の裏』とやらから、あちこちから黒い霧が噴き出してきた。
「おい、クウゴ!! あれ…!!」
ディンが指差すと、そこに、黒い霧が集まり、何かを形作ろうとしていた。
「まさか…まだ再生するのか!!?」
「おのれ、どこまでもしぶとい!!!」
俺とディンは身構える。そして俺は、オーキに呼び掛けた。
「オーキ!! もう一度聖なる炎を…オーキ!!?」
オーキは既に意識が無かった。一度重傷を負い、魔臓鎧を破壊され、その上で死力を振り絞って白炎を使ったのだ。オーキも既に限界だったのだ。
「くそっ…折角ここまでやったのに…!!」
俺は歯噛みしながら、復活しようとしてるアント・エアゴを睨みつけた。
「…ヤレヤレ、手の掛かる奴等だ、貴様等は」
ディンがそう言って、俺に魔剣を投げ渡した。
「ディン…?」
「貴様に預けておく、道連れにするには惜しい代物だ」
「道連れ…? まさかお前…!!?」
「ふっ…まさか我が、これを使う時が来るとはな」
ディンが両手を前に翳す。すると、両手から白炎が喚び起こされアント・エアゴに向けて放たれた。
「聖なる炎…お前、魔術書を読んだのか!!?」
「我に掛かれば、この程度の術使う事など造作もないわ!!」
「やめろ!! 例え使えても、お前は…!!」
俺の懸念通り、白炎はディンの身体を焼き始めていた。それもそうである。この炎はオーキがやっとの思いで制御出来た程に扱いが難しいのだ。一朝一夕で御せる物ではないのだ。
「クウゴ!! 此奴は我が引き受ける!! 貴様はそこの小童と離脱しろ!!」
「ディン…」
「それから…小童にも伝えておけ。『我は、未来に行ってくる』とな…さあ行け!! 早く!!」
「…済まない!!」
俺はオーキに触れ、そのまま帰還魔術でオーキと共に離脱した。
「…さて、我が全魔力を以て放つ白炎だ。先程の小童の火力とは訳が違うぞ!!」
我はそう言って、更に魔力を込めた。
白炎は更に強く燃え上がり、アント・エアゴを周囲の霧ごと焼いていく。そして、我の身体も。
(クウゴ…オーキ…感謝する)
そして、我の炎はこの『世界の裏』ごと、アント・エアゴを焼き尽くした。




