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未来へ向けて(2)

その後は、只の蹂躙だった。


俺とディンは、まるでアント・エアゴのスピードに対応出来ず翻弄され、攻撃をしようとも当てられず、只やられるがままであった。


業魔招来で真の力が解放されたディンを大きく上回る力と速さ、イリスによって底上げされた俺を上回る継戦能力、その未だ底の見えない圧倒的な力により、俺達はジリジリと追い詰められていった。


やがて、ディンは力尽き、膝をついた。そして、業魔招来も解けてしまう。


俺も、もう限界だった。


「ここまでだな、ガキ共」


「はぁっ…はぁっ…」


イリスの力を超える程に消耗し、俺も身体を動かせなくなった。


「長い事こうして生きてるとな、お前等みたいなのが偶に出てくんだよ…その度にこうして始末してんだけど、いい加減うんざりなんだよねぇ」


アント・エアゴはそう言って、その言葉通り心底うんざりした様に深く溜息をついた。


「…何が…楽しいんだよ…?」


「あ?」


俺は息絶え絶えながらも食いしばり、アント・エアゴを睨みつけた。


「こんな事して…何が楽しいんだよって聞いてるんだ!!! 色んな奴の人生無茶苦茶にして、何でそんなんで笑ってられるんだよお前は!!!」


俺が吼えると、アント・エアゴはそんな俺を鼻で嗤い、こう続けた。


「これ以上の楽しみがあるかよ? 争わせ、憎ませ、傷付けさせ、殺させ、醜い欲望を曝け出しながら死んでいく様を見るのが最高に嗤える…それに比べて、お前等二人が消えてからの100年間は実につまらなかったな」


アント・エアゴはそう言って、自身の胸に手を当てた。


「そこで、フリクト(コイツ)に力を与えたんだ…どうせハマドウにはある程度聞いてるだろ? コイツが周りから疎まれる様に仕向け、魔王になる様にした…コイツが新たな戦乱の切っ掛けになる様にな。


ルクスブルグの人間共にコイツが国を滅ぼす夢を見せた事もあったな…そしたら夢の通りホントに滅ぼしてやんの。その時は内心マジで笑ったよ」


アント・エアゴはゲラゲラと嗤う。それを聞いて俺は、激しい怒りに燃えアント・エアゴに言い放った。


「お前は!!! お前は絶対生かしちゃおけない!!! これからの世界の…未来の為にも…絶対に殺さないと…駄目だ!!!」


すると、アント・エアゴが右手を前に突き出し、見えない衝撃波の様な物で俺は吹っ飛ばされた。全身に激痛が走り、俺は地面に転がされた。


「がぁっ…ぐ…!!」


「殺さないと…? 出来るもんならやって見ろよ…そのザマでよ」


アント・エアゴが俺のすぐ前まで来ると、右手に光の剣の様な物を形成し、それを振り上げた。


「もういいや、死ね。これからの…俺の楽しみの為に」


そうして、アント・エアゴは俺目掛けて剣を振り下ろした。





しかし、その剣は俺には届かなかった。


「何っ…!!?」


突如、俺の握っていたイリスが強く輝き出し、アント・エアゴは大きく後ろに跳び退いた。そして、俺達の身体に異変が起きた。


(傷が…治っていく…!!)


アント・エアゴに付けられた傷が、治ってきていた。俺だけじゃない、ディンも、オーキも。


(まさか…イリスが、俺達を…)


イリスの調和の力が、俺達全体に作用している。ここに来て、イリスは更なる力を解放した様だ。


そして、その影響を及ぼしたのは、俺達だけでは無かった。


「なっ…!!? てめぇっ…!!!?」 


突如、アント・エアゴの身体にも異変が起きた。奴はその場で固まり、その後悶える様に身体を揺らし始めた。


「お前等…早く、コイツを殺せ…!!!」


その様子から、フリクトだと俺達はすぐに理解した。沈められたフリクトの意識が、イリスの調和の力によって息を吹き返したのだ。


「フリクト!!」


「フリクト…!!! てめぇ…!!!」


忌々し気にアント・エアゴが言うと、それと入れ替わりでフリクトが言った。


「俺を助けるとか…甘い考えを持ってるならすぐ捨てろ…!! 俺ごと…コイツをやれ!!」


「フリクト…」


「勘違いするな…これは俺が犠牲になる訳では無い、俺とお前等でコイツを殺すんだ…だから、俺はお前等に殺される訳では無い…!!」


フリクトがそう叫ぶと、次には笑顔を浮かべ、こう言った。


「クウゴ…後は頼む。俺を信じてくれて…ありがとう…」


「!!」


俺はディンと視線を合わせると、お互い強く頷いた。そして、フリクトの意思を尊重し、俺は駆け出した。

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