未来へ向けて(1)
「お・ま・え・ら・なぁぁっ!!!!」
セレスワイズ邸に戻ってきた俺とディンは、オーキに事の顛末を説明すると、物凄い形相で詰め寄ってきた。
「馬鹿な真似しやがって…!! そのまま首刎ねられたらどうするつもりだったんだよ!!?」
「我は信じてたぞ。我の言葉に共感し、止めてくれるとな」
ドヤ顔を決めるディンを、オーキは歯軋りしながら睨みつけていた。
「…俺は、刎ねられても構わないと思ってたよ」
「ああん!!?」
「…冗談だ」
そう言って俺は笑みを浮かべると、オーキはガックリ肩を落として溜息をついた。
「…まぁ、これで一応は戦争は止めれた訳だ…ホントに結果論だけどな!! 後は…」
「…アント・エアゴ。コイツを野放しにしておけば、また世界は闘争の世界に逆戻りだ。コイツは今の内に叩きたい…!!」
俺が言うと、二人は強く頷いた。
「ソイツの下にはハマドウが残したマーキングでいつでも跳べるんだろ? なら、その前に作戦を立てとこうぜ…正直、お前等二人の見立てで、どうだ? アイツの強さは?」
オーキが俺とディンに問うと、俺達は少し迷いながら、ゆっくりと告げた。
「…ああ、正直今まで戦ったどの敵よりも強かった」
「同感だ…元のフリクトよりも遥かに強い…あれ程の化け物がこの世にいるとはな…」
それが俺達二人の正直な見立てだった。業魔招来中のディンが全く歯が立たず、俺もあの圧倒的なスピードに全く対応出来なかった。
多分、俺とディンが二人係りでも、奴には勝てないだろう。
「…だから、俺は奴との戦い、オーキが鍵だと思ってる」
「…え? 俺?」
「あの時奴は、フリクトの身体を奪った瞬間、真っ先にオーキを始末しようとした。それはきっと、警戒してるからだ…オーキの使う『聖なる炎』を…」
そう、あの時アント・エアゴは、真っ先にオーキを始末しようとした。それはきっと、ハマドウに入ってた時にオーキと戦い、あの炎の恐ろしさを身を以て体験したからだ。
その証拠に、アント・エアゴはハマドウに入ってた時にこう述べていた。
「ここまで『再生』するまで時間掛かっちまって、やっと出てこれたぜ。ったくおめえの炎ホントおっかねぇぜ」
あの全て終わったタイミングで出て来るメリットはほぼ無い、恐らく本当に再生とやらに時間が掛かり、やっと出て来れたのだろう。
恐らく、これが奴の本心なのだろう。奴は、白炎を警戒していたのだ。
「…オーキ、白炎を制御してフリクトに取り憑いているアント・エアゴだけを焼き尽くす事は可能か?」
「…ああ、多分可能だ。飛び切り邪悪なあの野郎は…さぞ良く燃えるだろうよ」
オーキはそう言うと、ニヤリと笑みを浮かべた。
そして、戦いに臨む俺達。
「白導・炎舞…!!」
オーキの背後から無数の白炎の蛾が現れる。そして、
「うおおおおおおお!!!!」
「おおおおおおおお!!!!」
俺とディンは、アント・エアゴ向けて突っ込んで行った。
「ふん…」
すると、アント・エアゴの姿が消える。前に見せたあの超スピードで、どこかに移動したのだ。
俺とディンはそのスピードに全く対応出来ず、アント・エアゴを見失ってしまう。しかし、
「…そこだっ!!」
俺は駆け出しイリスを振るうと、そこに、
「ぐうっ!!?」
アント・エアゴが姿を現し、俺のイリスを受け止めた。
先程オーキが『白導・炎舞』で出した白炎の蛾は、アント・エアゴの魔力を自動で追尾する様に設定されていた。その蛾達の僅かな動きから、俺はアント・エアゴの出現場所を割り出したのだった。
そして、アント・エアゴが一瞬でも足を止めれば、
「アルケー!!」
ディンが叫ぶと、予め幻召魔身で出しておいたアルケーの糸がアント・エアゴを縛り、その自由を奪った。
「ぐぅぅ…!!」
魔力に釣られて迫り来る蛾達はアント・エアゴに群がり、やがてその身に白炎を轟々と燃え上がらせた。
「ぐぅあぁぁぁぁぁ!!!!!」
聖なる炎にその身を焼かれ、叫び悶えるアント・エアゴ。地獄の様な責め苦に、それはその場にのたうち回っていた。
(よしっ!! これで奴だけを燃やして…!!)
俺がそう思った、次の瞬間、
「ま、そんな魂胆だろうと思ってたよ」
ふと、どこからか声が聞こえた。そして、
「がはぁっ…!!? な…!!?」
オーキの胸から、一本の腕が生えていた。そして、オーキの背後には、いつの間にかアント・エアゴが立っていた。
「オーキ!!」
「ちぃっ…!!」
力を振り絞り、オーキは背後のアント・エアゴを白炎で焼き払おうとする。
「おっと」
アント・エアゴは自らその腕を切り離し、炎から身を躱した。
「がはっ…う、うぅ…」
切り離されたアント・エアゴの腕は白炎により燃え尽きるが、オーキは大量の血を吐きながら力尽き、倒れてしまった。同時にオーキの『威装』も解ける。
そして間もなく、白炎の蛾は全て消え去った。
「な…何でアイツが二人…!!?」
燃えている方とそうでない方、俺が二人のアント・エアゴを見比べながらそう言うと、燃えてない方のアント・エアゴは鼻で嗤ってきた。
「切り離した身体を先に見せたんだよバーカ。こうして倒せたと思い込ませる為にな…さて、これで厄介な白炎小僧は死んだな」
「くっ…!!」
「さて…後は消化試合だな」
アント・エアゴは、下卑た笑みを浮かべた。その笑みは、まるであのグラナの石碑に描かれていた、アント・エアゴの絵そのものだった。




