これからの事(3)
「よし、これで完成。勇者紋との同期完了だ」
そう言ったオーキが、床の魔方陣から手を離した。
朝、俺達はオーキの魔術工房の中に集まっていた。
「凄いな…俺の話から完成させたのか」
俺が感心しながら言うと、オーキが得意気に笑みを浮かべた。
「俺に掛かればこんなもん朝飯前さ」
オーキが昨晩、魔術工房に残ってある物を用意していた。
それは、緊急帰還魔術用の魔方陣。俺が、セレニアに向かった時に使った物と同じ物だ。かつてハマドウが作ったそれを、オーキは俺から聞いた話を元に再現してみせたのだ。
「これで勇者紋を持ったクウゴと、クウゴが選んだ対象の人物の帰還が可能になった。これでいつでも、ここに戻ってこられる」
「ああ、ありがとうオーキ」
「さて、それじゃあそろそろ行くか。ソニア、リインはすぐに飛べそうか?」
「はい、大丈夫です」
ソニアがそう言うと、俺達は魔術工房を出て、街の外に向かった。
街から出ると、ソニアの肩からリインが飛び立ち、その身体が淡く輝いた。
リインの身体がみるみる内に大きくなる。いや、元の大きさに戻っていく。
光が消え、その巨躯が姿を現す。ソニアの相棒である飛竜リインが、地に降り立った。
ソニアがリインに跳び乗り、その背に跨がる。そして、その背中を撫でながら、優しく声を掛ける。
「今日もお願いね、リイン」
俺とオーキも続いてリインに乗り、エルーシャに向けて飛翔した。
エルーシャ王国の近くまで来ると、その周辺で俺達は目撃した。
エルーシャ王国に今攻め込まんとしている魔族の軍勢と、それを阻止せんとして武器を振るう人間の軍勢。
戦争だ。前の旅の時も何度となく見てきた光景が、目の前に拡がっていた。
「さっそくおっぱじめてるな…どうする?」
オーキがそう言うと、俺は腰を上げてリインの背に立った。
「ちょっ…クウゴさん…!?」
「…ちょっと行ってくる」
そう言って俺は、魔族の軍勢目掛け、リインから飛び降りた。
腰の鞘に収めた剣を抜く。昨日、服を買った時についでに購入した剣だ。
地の魔術で創った石の剣は、たとえ魔力で強化していてもすぐ壊れる。これでは本気で剣を振るえない。
だが、これでやっと、本気で剣を振るえる。
俺はそう思うと、剣を構えて、その刀身に魔力を注ぐ。そして、
「ディバイド・エア!!!!」
着地と同時に、俺は渾身の一刀を、叩き込んだ。
その一刀が、一人の魔族を縦に両断した。そして、それに伴い発生した斬撃波が、地を這い、魔族の軍勢を引き裂いた。
ディバイド・エア。本来は飛び込んで繰り出す渾身の兜割りであるのだが、魔力で強化された俺の技は、更に斬撃波を生み出して、戦場を分断する一刀と化す。
「な、何だ!?」
「何者だ貴様!?」
突如介入してきた俺を見て、魔族達が困惑している。
俺は容赦なく、そんな魔物達を斬り伏せていく。
そして、同様に困惑していた人間の兵士に目を向けると、
「大丈夫か?加勢する」
そう言って、俺は魔族の軍勢に飛び出していった。




