白導対大魔術士(2)
「ハマドウの最も得意としている魔術は、転移魔術だ」
イストンの里の一件後、クウゴからハマドウについて話を訊いていた。今後ハマドウとの戦いに備え、その対策を練る為に。
「あいつは地水炎風の基本四属性の魔術に加え、更にそれらを掛け合わせた様々な派生魔術まで、幅広く極めている。その中でも、特に得意としていたのが、転移魔術だ」
「そりゃあ、果ては勇者召喚なんて術も開発するくらいだしな…」
「それで、この転移魔術なんだけど…そのハマドウの『すり抜け』の絡繰りに関係してるんだ」
クウゴはそう言うと、木の枝で地面に何かを描き始めた。
「これって…」
「お前が話してた、ハマドウが魔剣に施してたマーキング。これだと思うんだけど、どうだ?」
クウゴが描いたのは、確かにあの時ハマドウが見せたマーキングと同じ形をしていた。
「このマーキングには、転移魔術の魔方陣と同じ情報が詰め込まれている。だからハマドウは、これが刻まれた場所にどこでも跳べるし、刻まれた物はどこからでも持ち出せる」
あの時ディンの魔剣を奪い返したのは、あの魔剣の柄頭に刻まれたマーキングを使って、ディンの手からハマドウの手に魔剣を転送した。つまりはそういう事である。
「そして、そのすり抜けの絡繰りの正体はこれだ…ハマドウは、自身の身体にこのマーキングを二つ刻んでいる。転送元と転送先の情報が入ったのをな」
「? それ、何の意味があるんだ? んな事しても、その場からその場に移動するだけじゃねぇか?」
「普通はな。だけど、ハマドウはこれらのマーキングを更に調整して、転移が完了する時間を僅かに遅めている」
「遅めてって…まさか!!」
「そう…転移が完了するまでは、ハマドウはそこに居ても実体は無くなり、ああしてすり抜けた様に見えるって訳だ。つまりハマドウは、その間一切の攻撃が当たらず無敵になる」
「まさか転移魔術でそんな事が…」
「俺と旅をしてた頃は、この遅らせる調整は5秒が限界だった。それを過ぎると転移が完了し、ハマドウの実体はその場に現れる」
「つまりハマドウは…」
5秒経過後、その直後に攻撃を当てれば、ハマドウに攻撃が通る。そういう事である。
俺は懐からカードを取り出し、次の術を放った。白導・魔弾、ハマドウに向けばら撒く様に放たれた無数の白炎の弾が、ハマドウに迫った。
それらはハマドウの身体をすり抜け、背後の壁や城の内装を破壊していった。
しかし、狙い通りだった。何故なら、『炎舞』はまだ継続中だからだ。
ハマドウが消える直前の魔力の残渣を追って、白炎の蛾達はハマドウの方に向かっていく。これで転移完了の瞬間、丁度白炎の蛾がハマドウに届く。
「甘いよ」
しかし、白炎の蛾は突然その軌道を変え始めた。
蛾の行く方向を見ると、そこには火柱が上がっていた。
恐らくハマドウが発動した炎の魔術だ。転移する直前に予め発動しておいたのだ。残渣より強い魔力を残し、自動追尾の蛾を誘導する為に。
しかし、
「甘いのはアンタだよ!!」
白炎の蛾達の中に、軌道を変えなかった蛾がいた。それらは依然ハマドウの方に向かっていく。
自動追尾の蛾の中に、手動操作の蛾を混ぜておいたのだ。だからそれらは炎に誘導されず、ハマドウに向けて飛んでいけるのだ。
5秒経過、タイミングはピッタリ、これで当たる。
(貰った!!)
白炎の蛾は、ハマドウの身体に触れた。




