白導対大魔術士(1)
実家での修行中、俺は再び聖なる炎の制御に苦戦していた。
リンゴの皮を焼く修行により向上させた魔力のコントロール技術により、俺は炎の手懐ける事に成功した。
しかし、実戦では話は別であった。
「あっちっ…!!? くそ!!」
お袋との実戦稽古中、俺はコントロールを誤り白炎が自身に引火した。
「オーキ!!」
それを見たラピスは、攻撃の手を止めた。
俺は集中して炎を制御し、引火した炎を鎮めていく。やがて、炎は消えた。
「くそっ、またかよ…」
これで今日は四回目、気づけば俺の腕はあちこち火傷だらけになっていた。
俺は、戦闘と炎の制御の両立に苦戦していた。只でさえ制御に手間の掛かる白炎に加え、激しい戦闘、それも相手はお袋だ。その難易度はかなり跳ね上がる。
戦闘を疎かにすれば相手に殺され、炎を疎かにすれば炎に殺される、わかってはいたがやはり一筋縄ではいかなかった。
しかも仮想敵はあの大魔術士ハマドウ、今の時点でこの様では到底彼には通用しないだろう。
「お袋、もう一回だ!!」
俺はそうやって、戦闘中に白炎を上手く制御する為に日々鍛錬を繰り返し、試行錯誤を繰り返した。
そして、行き着いたのが、この白導・威装である。
白炎を使う度に出すのではなく、出した白炎を予め纏っておく事で、纏った白炎を操作する。
こうする事で、白炎の制御の負担を幾分軽くする事が出来るのだ。そして、俺の白炎の操作技術自体も鍛錬により向上しており、今や俺は、自身に全く引火させずに白炎を自在に操る事が出来るようになっていた。
初めて白炎を魔弾に込めて放った時に名付けた『白導』、これには当然意味がある。
『白炎』を『導く』術、そういう意味が込められている。
だから、この白炎を使った術全般に、俺は『白導術』と名付けたのだった。
「白導・炎舞…!!」
俺の背から、無数の小さい炎の塊が飛び出してくる。それらはある形を成していた。
「…蝶?」
「蛾だよ」
ハマドウの呟きに答えると、その白炎の蛾達はハマドウ向けて突っ込んでいった。
「触れるとやばそうだね」
ハマドウはそう言うと、水の魔術で周囲に水の障壁を張った。
流石はハマドウクラスの張った障壁、俺はその術の完成度に思わず息を飲んだ。あれなら並の炎の魔術なら完全に遮断可能だろう。
『並の』炎、なら。
「!!」
白炎の蛾達は障壁にぶつかると、その障壁は瞬く間に燃え尽きた。そして、そのまま中のハマドウ向けて突っ込んでいった。
聖なる炎は触れた魔力を忽ち焼き尽くす。だから、魔術によって作られた物であれば一方的にこうして焼き尽くす事が出来るのだ。
そして、この『白導・炎舞』によって放たれた白炎の蛾は、敵の魔力に誘導されてどこまでも追っていく。
聖なる炎は、その魔術士殺しとしての威力を存分に発揮していた。
そのまま白炎の蛾達がハマドウ向けて突っ込んでいった。しかし、
蛾達は、ハマドウの身体をすり抜けてしまった。
(里でも見せたすり抜けか…!!)
ハマドウが後ろに大きく跳んだ。そして、蛾達は行き先を見失った様にその場に飛び回っていた。
(やっぱり…触れられない物は燃やせないか)
白炎は触れた魔術を焼き尽くす炎だが、今の様に触れられなければ燃やす事が出来ない。
つまり、このすり抜けを攻略しなければ、俺は攻撃を当てる事は叶わないという訳だ。
「ふふふ、危ない危ない」
全くそう思って無さそうな事を口走るハマドウ。奴もその事がわかっているのか、その余裕はあの白炎を見ても崩れる様子は無い。
だが、俺はすり抜けの絡繰りをクウゴから予め聞いていた。
策は、ある。




