失意の底で(2)
平屋に戻ってきて、俺は客室に入るや否や、ベッドの上に座りうずくまった。
身体も心もしんどい、何もしたくないし考えたくもない。しかし、それに反して俺の頭の中には色々な物が駆け巡った。
お前の所為でソニアは死んだ、お前がしくじったから死んだ、何が勇者だ、役立たず、お前の所為で、お前の所為で、お前の所為で、
お前が、ソニアを殺した。
「う…うぅ…」
頭が痛くなる。俺は俯き両手で頭を抱え、その痛みに悶え呻き声を上げた。
(ソニア…!!)
「クウゴさん、また自分の事責めてるでしょ?」
「!!」
ふと、ソニアの声が聞こえた気がして、俺は顔を上げた。
しかし、当然そこにソニアは居らず。ただ何もない空間があっただけだった。
「…そりゃ、そうだろ…」
俺は再び膝を抱えてうずくまり、目を瞑った。
そして、あの山岳の開けた場所、ソニアが好きだった場所で、俺がソニアに言われた事を思い出した。
「そういう訳には行かないのは分かってます…だけど、だから、辛かった…クウゴさんは自分にはそれしか出来ないからと、言ってるみたいで…だから、私は!!」
「クウゴさん…死なないで下さい。自分の事、蔑ろにしないで下さい…」
俺の姿を見て心を痛めていたソニアの思いと願い。俺は今、そんな彼女の痛みを身を以て思い知った。
大切な人が傷付いていくのを見るのが、ましてや死ぬのを見るのが、こんなにも辛いという事を。
「…だからって、君が死ぬのは違うだろうが…」
思わず口にした俺の文句、その文句に応える者は、もう誰もいなかった。
「クウゴ、入るぞ」
我がクウゴの居る客室にノックする。あれから丸一日経ったが、クウゴは部屋から出て来る気配は無かった。
あれからクウゴはまともに食事も摂っていない。見かねた我は、こうして食事を持って行こうとしていた。
ドアを開ける。しかし、そこにクウゴは居なかった。
「なっ…!!? くそっ…!!」
我は食事の乗ったトレーを食卓に置き、オーキの居る工房に駆け込んだ。
「小童!! クウゴが…クウゴが居ない!!」
「はぁ!!?」
「いつの間にか居なくなっていた…すぐに探すぞ!! 貴様も来い!!」
「帰還魔術でどっかに跳んだか…くそっ!! ディン、魔方陣の設置した場所回ってくぞ!!」
「秘技・幻召魔身!! 来い、フェレス!!」
我は幻召魔身でフェレスを喚び、フェレスにチャッピーを喚び出させる。
そして、我とオーキはチャッピーに乗り、拠点の街を飛び立った。
(…? 何だアイツら? 何か慌てて飛んでいったな…)
トイレから出ると、ディンとオーキを乗せたチャッピーが飛び立つのが見えた。
先程俺は、トイレの為部屋から出てきていた。その際、ディンが厨房で何やら真剣に作業していた為、邪魔しちゃ悪いと思い声を掛けずにいた。
そしたら、今度はチャッピーに乗ってどっかに飛んでいってしまった。しかし、俺に声を掛けなかったという事は、グランディン関連の事では無いのだろう。
(…部屋戻るか)
俺は平屋に戻った。すると、食卓には一人分のサンドイッチとスープが載せられた木のトレーが置かれていた。
(ディン、さっきこれ作ってたのか…?)
それを食べずに出て行くとは、余程の事情があったのだろう。俺はそれを蝿帳籠を厨房から持ってきて被せておき、客室に戻った。




