魔誕の日(3)
セレニアを滅ぼした直後、俺とハマドウは工房に戻ってきていた。ハマドウは、一冊の魔術書らしき物を抱えていた。
「…それは何だ?」
「セレニアにあったのを回収してきたんだ。ルクスブルグとの契約の一環でね、今回のセレニア侵攻の手引きをして貰う代わりに、渡す約束をしていたんだ」
そう言ってハマドウは、俺にその書を見せびらかした。
「これは、異世界から勇者を召喚する儀式、その方法が記されている資料なんだ。君も知ってるだろ?」
勇者召喚の儀、100年前に魔王グランディンを相討ちによって倒したという、異世界の勇者を召喚したという儀式である。
ハマドウ曰く、ルクスブルグ王は前々から、戦力の増強の為に勇者召喚の儀の方法を欲していたと聞く。
今回ルクスブルグ王が俺達に協力したのは、その召喚の儀の資料を手に入れる為という訳だ。
「ふん…勇者を手に入れる為に魔族に協力するとは、相変わらず愚かだな、今の王は」
こうしてハマドウはルクスブルグ王に召喚の儀の資料を渡し、今後もハマドウはルクスブルグに度々赴き、魔族の肉体の提供、強化勇者の作成等、秘密裏に協力していった。
俺達が、利用する為に。
勇者クウゴを退け、俺達は再びルクスブルグに向けて進軍を開始した。
用済みの、あの糞みたいな国を滅ぼす為に。
「ハマドウ…国の様子はどうだ?」
「僕が提供した強化勇者達が一度魔族を退けたから、すっかりルクスブルグ王は舞い上がってる様子だ。まぁ、今の君なら取るに足らないだろうけどね」
「ふ…相変わらず愚かな男だ」
「さて…じゃあ、行こうか」
そして、俺達はルクスブルグに突入した。
「掛かれぇぇぇ!!!!」
俺が号令を飛ばすと、魔族共はルクスブルグの兵共と交戦を開始した。俺とハマドウは一直線で城に向かっていく。すると、
「おや? 早速お出ましだね」
首輪を付けた者がぞろぞろと俺達に向かって押し寄せてきた。恐らくあれが、ハマドウが言っていた強化勇者なのだろう。
「ぐああぁぁぁ!!!!」
魔族の血肉を取り込んだ影響か、勇者達は皆理性が感じられ無かった。本能のままに襲い来るその様は、正に獣畜生と変わりない。
「…魔王十字衝」
俺は魔剣を二度振り抜き、十字の巨大な斬撃波が放たれて勇者達に向かっていった。
その斬撃波を喰らった勇者達は、為す術無くその身を斬り刻まれ消し飛んだ。
魔王十字衝、魔剣で喰らった魔力を解放して放つ必殺の斬撃波だ。
俺の隣で、ハマドウも勇者達と戦闘している。そして、気が付くと辺りには凍りついた勇者達の氷像が幾つも並んでいた。
そうして、勇者達を討ち倒していくと、やがて辿り着いた。
「な…!!? 何故貴様等がここに…!!?」
『現』ルクスブルグ王が、俺とハマドウの姿を見て、驚嘆の表情を浮かべていた。
「魔王グランディン…何故だ魔術士!! 我々は協力関係にあった筈!! 何故…!!?」
「もう世界は充分引っ掻き回せた、だから貴方は用済みなんだと…ねえ、グランディン」
ハマドウはそう言うと、俺はルクスブルグ王の前に出た。
「…覚えてるか? 俺の事」
俺はそう言って、被っていた仮面を取り外した。
「もう何年も経った。顔付きも大分変わってるだろうが、面影くらいは残ってるんじゃないか? それとも…こう言った方がいいか? 『大臣』」
「き…貴様!! まさか…フリクト!!?」
「久し振りだな…奪った玉座の座り心地はどうだ?」
俺は冷たく、嘗て大臣だった『現』ルクスブルグ王、父と母を殺してその罪を俺になすり付けた男を見下ろした。




